愛した者のため、決して許されぬ罪を犯してしまったあなた。
悔い、歩み、交差した世界は、美しいものになると、私は信じている。
だから、どうか。
どうか、幸せであったことを、願う。
この願いに、祈りに、果てがきたとしても。
(祈りの果て)
貴方の頬を伝い、指の隙間を縫うようにこぼれ落ちた涙は、ちいさな、ちいさな魚となり、海に還ってゆく。
そして、今日貴方が見なかった満月を、海面から見上げるのだ。この満月が、貴方に届くことを祈って。
(そして、)
日帰り旅行、帰りの車中泊。
車の中では眠れない質の人間だが、瞼は眠気に抗えないようで。眩しくて鬱陶しかったあかりは、瞼を閉じてゆくにつれ、空気に溶けてゆらゆらり。頭に霧が立ち込める。光と霧の狭間で、現実と夢の狭間で、今日の思い出を振り返る。うん、とても楽しかった。今日のことをもう一度、夢でみれたらいいな
(光と霧の狭間で)
下を向いて歩いたっていい。ほら、小さな花を踏み潰さなかった。
上を向いて歩いたっていい。ほら、大きな雲に隠れた細い細いひこうき雲を見つけられた。
下も上も向きたくなくて、歩き疲れたなら。いや、歩き疲れてなくたって。とびきり美味しいご飯を食べに行こう。私は今、おでんが食べたいな。
もっと、自分を甘やかしたっていいんだ。
どこまでも、私は私と歩いてゆくのだから。
(どこまでも)
大人になってから初めて転んだ。しかも盛大に。二度も。
たくさんの人に見られた。先輩、後輩、ましてや意中の人にも。
大丈夫?と言われ、あわてて大丈夫ですと返すたびに、もう大人なのに、泣きそうになる。だって、すっごく痛いんだもん。血が滲む腕を見ながら、また泣きそうになって、そんなんで泣いたら子供みたいだと堪えて、絆創膏をぐちゃっと貼った。
帰る時間になり、支度を済ませ、とぼとぼと歩きだす。覚えていて欲しいとは言わないけど、もう私のケガなんてみんな忘れちゃったんだろうな、そういえば、転ぶのは子供の時以来だな、大人になってからは初めてだな、なんてことをぐだぐだ思っていたら、ふと、足元に花が咲いていることに気がついた。
危うく踏むところだった。コスモス、かな。でも一輪だけだし、花びらが少しちぎれて項垂れている。彼女(彼かもしれない)もケガをしたのだろう。
ただ、私とは違う。私は私のドジでケガをしたが、彼女は誰かに傷つけられてケガをしたのだろう。可哀想だな、と思う私も家に着いた頃には彼女のケガなど忘れていることだろう。
なんか寂しいな、と、しばらく一輪のコスモスを眺めた。
そしてもう一度、歩き出していった。
(一輪のコスモス)