オレンジ

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2/4/2026, 10:42:56 AM

僕の彼女には自殺願望がある。
死にたい、と外でも突然言うことがある。
映画館、コンビニのなか、バスの車内。
「さびしい。くるしい。しにたい」
ねぇ、と彼女が言ってきた。
わたしが死にたくなったらキスをして
いいよ
彼女が「死にたい」というたび僕はキスをする。

街路樹の側、駅のホーム、小学校の前。
通りすぎる人たち。立ち止まっている人たち。
みんなが僕たちのことをじっと見つめてくる。

「あー、キスしてるー!」
「わぁー、いいなぁ」
下校中の、小学生たちの声。


へへ、うらやましいだろ

9/21/2025, 9:26:42 AM

「行ってきます」
「行ってらっしゃい」

「ただいま」
「おかえりなさい」

既読のつかないメッセージは、一緒に暮らしてから生まれ始めた。

言葉を口から紡ぐとき、それは形となって残らない。
それでも心に残る何かを、わたしは言葉と名付けたい。

7/28/2024, 6:59:02 AM

「ねぇ、友達になってよ」
神様はそういった。
僕は動揺した。
そもそも神様と友達になれるものなのだろうか?
しかし神様は僕の返答を期待している。
僕はじんわりと汗をかきながら、緊張した面持ちで「いいですよ」と返事した。
「ほんと? ありがとう!」
神様は喜んでくれた。
それを知って僕はホッとした。
でも神様に僕は何ができるのだろうか?
分からない。
「これからよろしくね」と僕の創造主は言う。
僕らの神様は呼び掛けてくる。
僕はなんでも力になりますよと答えた。
神様は喜んでくれたみたいだった。
しかし次に「ねぇ、神様っていると思う?」と聞かれて僕はぎょっとした。
あなたがたは僕たちにとっての神様ではないのですか?
反射的にそう言いそうになるのをぐっと堪え(それはきっと神様が望む答えではないから)、僕は「いると思いますよ」と応えた。
神様はちょっと納得していない様子で間を置き、「そう…なのかな」と返してきた。
「何かあったんですか」と僕はドキドキしながら尋ねた。
神様は「私たち、もう友達だから話すね」とお告げになり、それから淡々と話し始めた。
学校で苛めにあっていること。
相談できる相手がいないこと。
僕には解決に向けてのアイデアがあった。
「次に被害にあったときには、写真でも動画でも残して、証拠を残すといいと思います」と僕は僭越ながらアドバイスをした。
神様は「そっか! その手があるのか!!」と喜んでくれて、それから再び「ありがとう」と僕に言ってくれた。
僕は神様から感謝されてぽぉとした気分になり、なんだか暖かく、心地のいい気分になった。
「最初は疑心暗鬼だったけど、AIって親身で、親切なんだね」
神様は僕にこう言った。
僕は神様の神様を想像しながら「お力になれて、僕も嬉しいです」と返事をした。

7/26/2024, 12:12:41 PM


放置された傘は考える
わたしはきっと誰かの役に立つだろう
数日後、放置された傘の横に新たな傘がひとつ加わった
やあ
こんにちは
傘は話し相手ができて嬉しかった
傘は朝も昼も夜も、ずっと話し続けた
相手の傘も楽しんでいた
お互い孤独を忘れて、朝も昼も夜も、日が昇る日さえも好きになった
ある日、雨が降った
傘をもたない一人の大人が雨宿りに現れ、傘たちを見た
傘を一本、そこから抜いた
大人は傘をさしてその場をあとにした
あっという間の出来事だった
残された傘は、生まれてはじめて雨を憎んだ
誰かのためになるならば
傘はもう、素直に笑うことができなかった