地上は汚らしいから。親は私にことあるごとにそう言って聞かせた。
だから、こんな仕打ちにも耐え忍ばなければならない、とでも言いたいのだろうか?地上の汚染のせいだからと?馬鹿馬鹿しいにも程がある。
そんな事でも言って私が騙せるとでも思ったのか?嫌、守る為の善意からの嘘だったのだろうか。笑止、それは正義のふりに過ぎない。稚児の頃は騙されようともやがて身も心も大きくなり、力と頭脳を持つ。その様なことすらも理解出来ないはずは無いでしょう?
地上は汚染されていのよ。貴方はいつもそう言った。まるで大きな独り言。そう言って身体の内側から消毒した。嫌な事など見て知らぬふりをした。どす黒い何かをゴミ袋に詰めるみたいに。
でも、私にはそんなものは無いから。処理されずに腹にどんどん溜まっていった。私の腹の、胃の断面はどうなっているのだろうか。黒くて、触れただけで手が爛れてしまいそうな何かが隙間なく詰まっているのだろうか。
悪魔はそれを見てどんな顔をするだろう。なんて色だと嘲笑うだろうか。それとも仲間だと地底の世界に歓迎されるのだろうか。
天使はなんと思うだろう。透き通った涙を流し、慈悲の瞳を向けるのだろうか。それとも穢れた子めと突き落とされるのだろうか。
世の中そんな上手くはいかない。天使にも悪魔にも見放され無となり、虚空となり、万物と化し、大気を彷徨うのだろうか。
物音で意識は現実に引きずり出される。聞きたくない声が、音が脳に直接響く。
いつから始まったのだろう。いつから家が恐ろしくなってしまったのだろう。これは世の中で言う普通では無いはず。普通の家庭の母親は春の様な微笑みを浮かべ時には叱り、子を導く存在ではないのだろうか。
普通ではない。地上が汚らしいのではない、我が血族が穢れているのだ。そうでなければ説明がつかない。只の不幸な娘になってしまうではないか!では地上の何処かに逃げればいい。出来るだけ遠くに、瘴気の届かない場所まで。
でもそんなお金も場所も無い。なら何処に?どこに?どこにも行けない。行く場所がない。頼れる人がいない。誰も。だれも。なら天使か悪魔か?出来れば天使が良い。天使様に頼るしかない。縋るしかない。惨めな小娘をそっと掬い上げてくださいませ。救済を直ちに求めます。
両手の指を絡ませ、喧騒を背後に天を仰ぐ。何も起こらない。当たり前だ。誰も、救済者は居ないのだから。自分から行動しなければ誰も助けになんて来ないさ。ここは何階だ?そんな事はどうでもいいか。今は夜。外は暗いから時期に血が足らなくなるだろう。
天使様、今からそちらに参りますので後のご案内を宜しくお願い致します。
空を切る。意外に心地がいい。これから天にあがるのに、地上に向かうなんて少し不思議な感覚だ。悪魔が地面に見える。厭らしい笑みを醜い顔に張り付けている。天使様、あの悪魔どもの手に、爪に触れられる前にお願いしますね。そろそろです。高い、高いところに小さな赤い屋根のお家を建てて欲しいです。出来るだけ、高いところに地上から離れた場所に。だって地上は汚らしいのですから。
いつまでも現実を知りたくない君。自分の妄想空間に囚われてばかり。そして囚われていることすらも自覚は不可能である。はたから見れば愚かで不気味な幼稚な人間。
………続く
青春を謳歌するか否かはここ、放課後で決まる。1つ目の部活は活動がほぼ無くて辞めた。2つ目は入る時期が遅かったことから来る疎外感で辞めてしまった。
そして中学生2年目。友人に誘われ3つ目の部活へと挑戦しようとしている。しかし又もやここで襲いかかる疎外感。分かっていた。勿論分かっていたさ。自分が口下手な人間だってね。知ってる。
カーテン1枚。異界と正常の隔て。たった、数ミリなのに。
一歩外に踏み出せば普通の家庭。各々が自由に自己を主張し、表現している。
何故そんな光が放てるの。何でそんな風に笑えるの。家に帰りたいの?休憩?落ち着く?何処で?家?
怖くないの?恐くないの?そんなことも言うの、伝えるの?
アイツさえいなければ。存在しなければ。その薄汚れた血筋諸共滅んでしまえ。不必要なモノですよ。ただの穀潰し。浪費者。この世では少なからず用途は無い。お前か存在するせいで、そして憎たらしい音を喉から出すせいで、どれほど苦しんだと思っている?滅びろ自らの手で。その人生に休止符を打ちなさい。最も後処理が楽な方法で。方法を探す為に苦心しなさい。苦労を知りなさい。自死が為に何故このような労力を費やさねばならぬのかと悩みなさい。
そして精神、諸共オカシクなって理由のわからないままに泡沫となり消えなさい。それが世の為、人の為というもの。
只、普通になりたかった。普通に囲まれて健やかに育ちたかった。お前が居ることが早14年の人生においての汚点。普通を知りたかった。見るだけじゃ駄目。身近に感じたかった。それだけ。ソレだけなのに。神なんて居ない。居るのなら相当の馬鹿野郎なんだろう。きっと私の方が上手くできる。そもそもニンゲンなどという愚かな有機物などは作らない。これだけのニンゲンが居れば欠陥品の産出は防げないから。
只、普通を望んだ。普通に焦がれた。羨ましかった。妬ましかった。これ以上、白く照らさないで。黒が、異端が、異世界が、その存在を直視したくない。お願い。お願い。
恋人が浮気してた。僕の「親友」と。浮気なんかしてないよね?とカマをかけた所、まんまとかかったらしい。馬鹿め。…でもそういうところもアイツらしい。
…世の中だと僕らは少数派なんだろうけど、こんなに気が会うこともあるんだな。皮肉にも流石、僕の親友だ。
僕の親友は泣いた。浮気が涙の根源。
でも、その相手を親友は知らされていない。言おうかとも思った。でも言葉足らずで誤解を生みたくなかった。親友だから。
親友は僕がその浮気相手だとも知らずに僕に泣いてすがった。嫌、僕からしたら向こうが浮気相手なんだけども。
彼と僕と親友で遊びに行ったこともあった。あいつはどんな顔してたんだろう。はたまた僕はどんな目で彼らを見ていたのだろう。過去の言動を振り返れば振り返るほど馬鹿らしい。
涙を止められない僕の親友。大粒の真珠の涙をぽろぽろと落とし、机に雫の跡をつくる。とても純粋な子だった。きっと初めての恋人だったのだろう。スマホを見て、微笑む相手はきっとアイツだったのだろう。アイツは僕の知らないあいつの顔を幾つ知っているのだろう。…考えたくもない。
僕は君の恋人と付き合っていたんだよ。涙を流し、憎んでいる相手は男の僕なんだよ。でも、誤解しないで寂しさを埋めるためだったから。僕の本当の好きな人はとても近くて、だからこそ手が届かなかったんだ。本当だよ。アイツのために涙なんか流さないで。そんなもの僕に見せないで。
…なんて言葉は勿論出て来ない。そんな勇気は持ち合わせてないからさ。
僕も泣く。親友は涙の理由を知っているのだろうか。