イカワさん

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5/31/2025, 9:19:52 AM

「可愛いね。たっくん。」

「なんだよ、う、うるせぇな。てか、もうその呼び方辞めてくんねぇ?タクって呼べばいいだろ。」

そんな事言ってるけど僕知ってるよ?

君、恥ずかしくなると耳が真っかっかになっちゃうんだよね。

まあ、そういうところも可愛いんだけどね。

「…とにかく!行ってきます!!」

「え、どこに行くんだい?」

「と、ともだちと…ボーリング!」

本当に分かりやすいんだから。嘘だね。

「へぇ、ボーリングか。誰と行くの?」

「そんなんお前に関係ないだろ!もういいな?行ってくる。」

ドアがガチャリと閉められる。

「…ふぅん…そっか。」

本当はどこに行ってるのかな〜?GPSの行方を確認する。

家の近くのコンビニを横切って、左に曲がる。

それから真っすぐ進んで3番目の曲がり角で右折。

あ、止まった。信号かな? 

ふふふ、ちゃんと待つんだね。偉い偉い。

また進みだした。

真っ直ぐ、次に右折。真っ直ぐ…真っ直ぐ進んでーーー。

「着いた…かな。」

ここはーーー

「へぇ…」

同級生の家かな…?こんなに仲がいい子がいたのか。

「でも、"ともだち"ではないんだもんね?」

恋人か?それとも脅されてるのか?それとも他に何か…?

まあ…とにかく隠し事をしているのはわかったね。



ここ最近、帰りが遅い。 

"防犯"のために盗聴器を追加しよう。

今日も帰りが遅い。

まず位置を確認。

「…あの家だね。」

そして音。

「性別は男。口振り…意外と親しい仲なんだね。」

機械に耳を密着させどんな音も逃さない。

少し高めの物を買って良かった!ノイズが少ないね。

『今日も来てくれてありがとう。』

『いや、俺が来たかっただけだし。…逆に迷惑じゃないか…?俺…。』

『むしろ来てくれて感謝だよ!親共働きで淋しいからさ』 

『…ほんとお前は良いやつだな』

『ありがとう。それに学校じゃあこんな事出来ないからね』

『あっチョット。せめてベッドまで待てって!』

『え〜いいじゃん。ソファあるし?』


肌の粟立ちを感じた。吐き気がする。

トイレに駆け込む。

全てを吐ききらなければ、憎悪、嫌悪、絶望。

空になるまで嗚咽を繰り返した。

黒く渦巻いた感情の中に、僅かに高揚も含まれていた。

「…ゔっゴホッ、ハァハァッ…はは。

男いけちゃうんだね。」

興奮に身を捩らせる。

「ははっ、しかもネコちゃんか〜。」

「間違ってなかったよ。諦めなくて良かったよ!あぁ、息子よ!パパは嬉しいぞ!こんな立派に育ったちゃって!」

「……でも…ちょいとお人好しが過ぎるんじゃないかな。

馬の骨に体差し出してさ。

ねぇ…ダメじゃないか。汚れてしまうよ。

ああ、パパが綺麗にしてあげるからね。

愛しい息子よ。」

3/16/2025, 1:37:55 PM

「ただいま。貴方、今いい?」

「あぁ勿論。」

「実はね、花を買ってきたの。沈丁花って言うのよ。」

薄い桃色と白色の見慣れない花だ。

「とても良い香りがするね。」

「そうなの。店員さんに一番香りが強い花をって頼んだのよ。」

「なるほど。本当にいい香りがするよ。さて、何処に飾ろうか。」

「寝室にしない?アロマみたいになりそうだし。」

「いいね。早速置いてこようか。」

「あ、あとこの花、"幸福の香り"って言われてるのよ。今の私みたいね。貴方がいるから毎日が幸せよ。」

「ぁ,僕もだよ。」

「じゃあ、寝室に置いてくるわね。」





「お邪魔しま〜す。ゴム持ってる?今日は奥さん帰ってこないんでしょ?1箱ほしーなー。」

「あぁ、あるよ。あ、帰ってこないけども泊まりはなしだからな。万が一、な。」

「はいはい!わかってます〜。そんなこと期待してません〜。」

「…もしかして一晩中だと思ってた?」

「なっ、…そ、そうですケド。」

「じゃあ、1 秒でも長く気持ち良くなろっか。」

「や〜ん早い〜。」

女を布団に押し倒す。

手首を固定し、服に手を掛ける。

と、女も俺の服を脱がし始める。

……甘い香りがする。沈丁花だ。

……幸せの香り、か…。

「な〜に、じぃっとしてんの〜?」

起き上がってキスを求めてくる。

抵抗せずに唇を重ねる。

微かに開いた唇の隙間に舌を忍ばせる。


——あぁ、甘い香りがする。この女の香水だ。

3/8/2025, 11:47:56 AM

「ねぇほら早く!こっちだよ!こっち〜!」


「意外と遠いね。昔、こんな何処まで来てたんだね〜。」



「………昔のことじゃん。それに…バレてないし。」

「…まだ怒ってるの?

でっ、でも!!あの時は、しょうがなかったじゃない…?」




「あ、ほらここの橋。覚えてるかな。大変だったよね〜。

丁度雨の日だったからさ

泥と水と…血でドロドロになりながら渡ったよね。

…それでここの水で洗ったよね。

まあ大体雨で落ちてたけど。」



「……そろそろだね。どの木か覚えてる?

私はねハッキリ覚えてるよ。あの木。

なんかメッチャ育ってる感じしない?

…栄養になってんのかな。」



「川の水で綺麗になったけど結局、

穴掘る時に汚れちゃったよね。

あ、スコップは別の木のとこだよね。

あ、ほらこれだよ。」



「………掘り返してみる…?

ハハハ冗談!そんなにおびえた顔しないでよ〜。

…見たくないに決まってるでしょ。」


「………誰にも言ってないよね?

私?言うわけないでしょ。

この話は墓まで持ってくつもりだっちゅ〜の!」



「…てかさ、そのカバン何は入ってんの?

まあ、予想はできるけどね。

だってこの場所に行こうって言ってきたのアンタだもん。

びっくりしたよ?まあ…覚悟はしてたけどね。」


「……そのごめんね。色々嘘ついて。傷つけて。

でも、しょうがなかったのもあるから

…そこは理解して欲しい。許してとは言わないからさ。」


「でも最後に言ったことは守れそうだね。

墓場まで持ってくよ。秘密だもの。」


「最期にしゃべりすぎちゃったかな。

あ、あとバレないようにしてよね〜!

アンタ正義感強いんだから自首とかもダメよ。

アンタも墓場まで持ってって。」


「まあ、こんなこと言う必要もないか。

痛いのは嫌だから。一発で終わらせてよ〜!

…アンタもね。」

3/6/2025, 8:28:28 AM

「周りをぐるりと見てみなさい。どう思ったかね?」

博士はふと手を止めて僕に聞く。

こんなやり取りは慣れっこだ。

博士は暇なときはいつもこうして僕に同じ疑問を投げかける。

デジャヴって奴だ。

「ほれ。」

…拒否権はないようだ。大人しく周りを見回す。

「なんか、不思議な物がたくさんあるなぁ…と。」

「ふむ。例えばどれが不思議なんだい?」

「……これ、とか。」

指を向けたのはずっと前から気になっていた大きなクリップに鳥の遺伝子を配合させたような、気味の悪いもの。何に使うのだろうか…触れたくもない。

「これか。」

「ぁあ……」

後ろには眼球モドキまでついているのか!

「博士、これは何なんですか…。」

この質問も何度繰り返されたことだろうか。

博士がすっと目を閉じる。

博識な博士の雑学込みの解説タイムだ。

……が、博士の口から得意げな「説明しよう。」は聞けなかった。

「…世の中には、知らなくても良いこともあるのだよ。」

「………そうですか…。」

これ以上は、何も聞かない。

互いに何も追及しない。

やがて静かな不規則な執筆音が沈黙を心地良いものに変えてくれるだろうから。

2/1/2025, 2:13:16 PM

どれだけ痣作ったって、血を流したって、やっぱり愛し合ってることには変わりは無かった。

体はダメになっても心がダメになることはないからさ。

でも、それは私だけだったみたい。

貴方は体も心も無傷だったのでしょう?…でもコレは私の妄想に過ぎなかった。…そう思いたかった。

あの拳は、貴方の辛さを心の痛みを具現化したものだから…そう耐えてきたのに。


私にはそんな態度な癖に金髪ロングでミニスカ履いた、あの女にはデレデレしてんじゃん。

それでさ、思ったんだよね。あ、私だけじゃあダメなんだね。嫌、アイツが弱いんだよね。弱いから私が支えて上げなきゃいけなくて。でもそれは私じゃダメだったみたいで。何人か必要だったみたいで、ダメ、だめだったから…。

涙は出てこなかった。痣の数が分からなくなった頃から泣けなくなってしまった。多分、枯れちゃったんだろうね。

だからか、妙に頭が冴えてきて。冷静になって。カバンからスマホ取り出して。あのクソ男の連絡先をスクショ。で、ひとまずブロック。なんかに使えるかもしれないしね。

――あ〜、クソ。なんであんな奴に尽くしてたんだよ。なんで痣作られてんだよ!世界に1つのアタシ様の体だぜ?オーダーメイドしたって完璧にはなんねえんだよ。

あ〜…クソ虚しいなオイ。

こんな日に限って妙に空が澄み渡ってやがる。あ、雲みっけ。ちっせぇなあー…。………。はぁ…。


バイバイって、パイパイに似てるね――

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