それがなければ、人は最も正しく在れるのかもしれない。
しかしなければ、我々は現実に錨を下ろしておくことができない。
人は皆、自身を通して世界を濾している。だから今日も、辛うじて生きていられる。

（フィルター）

人の一瞬の輝きを、あるいは絶望を、繰り返し見ている。
何を醸成しているだろう。
人の記憶の片隅に居座って。

（誰もいない教室）

出すべき言葉を飲み込み続けたらそれ自体を無視するようになって、私からは取り出せない言葉に成り下がってしまった。
今の自分が持つ言葉を、来年の自分は持たないかもしれない。
10年前の私は今日への責任を負ったのか？
「　　　　　　」と、たった一言を、放たないことで？

（言い出せなかった「」）

自戒を宗教にしているわけです。
呪いは己に向かうのです。
理解されたくないくせに、誰かに見ていて欲しいところまで、セットなのです。
すべてを手放すきみを私も手放すから、かえろう。

（secret love）

1ページの重みが、小さくなった。
低密度、低解像度、でも繰る手は止まる。
辻褄が合わないな。
日常のページを繰っているのだからということで、諦めてみようとするが、往生際悪く、まだなお悪足掻きしている。

（ページをめくる）