結城斗永

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もう3日も筆が止まっている。
いや、動かしても像を結ばないと言うべきか。

お題からストーリーを組んでみてもどうにも納得がいかない。
書いているものをいったん離れて眺めてみて、結局何が書きたかったんだろうと途方に暮れる。
仕上がったものが何も伝えてこない。

こうして書いている『いま』も、お題を無理やり組み込めないかと悪あがきをしている。
『降り積もる想い』を『光の回廊』から眺める私の横で『揺れるキャンドル』の火。

取ってつけたようなお題の存在が妙に浮いて、ひとつの粗が目につけば全てが不完全に見える。

そうこうしている内にも、お題は次から次へとやってきて、書かなきゃいけないことがたまっていく。
書くことが義務になってることに気づく。

これはお題の呪いだ。
お題のためだけに生まれた舞台が、台詞が、人物が、形になる前に死んでいく。
ごめんよ、生かしてやれなくて。
でも歪な形で世に送るくらいなら、いっそ破り捨てたほうがいい。
この3日間、そんな事ばかり考えていた。

こんな愚痴っぽいことを言ったところで、どうにもならないことくらい分かっている。
全ては無意味なこだわりと、自意識の過剰さのせいだ。

書きたいことがないなら無理して書く必要はない。
書くために寝る時間を削る必要はない。
書けないなら一旦筆を置いてもいい。
そんな当たり前のことも甘えや逃げに思えてくる。

分かっていた。
もともと筆不精を克服したいと始めたこと。
とにかく書くんだと自分を追い立てていたこと。

分かりきっていたんだ。
筆が止まったときに自分を責めてしまうことも、
いったん筆を置いたら、再び手にするまでに時間がかかることも……。

書くことに理想を追いすぎた。
書くことに意味を求めすぎた。
書くことに義務を課しすぎた。

何にそこまで追い詰められる必要があろうか。
何故それほどまでに縛られる必要があろうか……。

少し心に余裕が持てるようになるまで、しばらくお題から距離を置こうと思う。
お題から浮かぶものがあれば書くし、そうでなければ書きたいことを書くだけだ。
書きたいことがなければ、その日見たものを書こう。

書く習慣って本来そういうものだろうし、お題はあくまで筆を執るためのヒントだから。
必ずしもそれに従う必要はない。
自分で自分を責めるのもやめよう。

だから最後に、書けなくなった私へ。

書くことを嫌いになるな。

12/23/2025, 4:16:39 PM