カシャリと響く音がした。
長年使っていたティーカップを、不注意で落としてしまった。
正直、お気に入りというわけでも、贈り物というわけでもない。
一人暮らしを始める時に、自宅近くの小さな雑貨屋さんでなんとなく購入したものだった。
あまりに突然のことで、しばらく立ち尽くしていた。
割れてしまったティーカップを見下ろすうちに、
私は体の一部を失ったような、
だけどどこか腑に落ちるような、
それでもやっぱり、
心の一部が空いてしまったような気がした。
不思議なもので、ティーカップの落ちる瞬間は、一瞬のようにも、とても長くも感じた。
長年使っていただけの、特別というわけでもないティーカップ。
これから私が大学を卒業して、就職して、色々な出会いがある中で、後何回、この「長い一瞬」を経験するのだろうか。
その時の私は、涙を流すだろうか。
それとも、静かに受け入れるのだろうか。
今言えることは、私はこのティーカップに、とても愛着が湧いていたということだけだ。
お題:ティーカップ
11/11/2025, 1:21:53 PM