曖昧よもぎ(あまいよもぎ)

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夜空を越えたら、どこに辿り着くのか
知っているひとが居るなら紹介してもらいたい
いちばん答えを知っていそうな君に濁され続け、ついに聞くことはなかった

決してつかむことはできなかった、星や空や答えは
太陽はずっと遠くにあって、近付くと燃え死ぬそうだ
天体の授業を受けた記憶だけがあり、中身は全てゴミ箱へ往った

あの日のあの時間のあの場所の帰り道は確かに昏かった
それでいて美しかった
街灯も無い山奥に、君とふたりで歩いていた
満天の星空を視野にいれながら、海を頭に描いて

狂っていたんだろうね、君はきっと大人にはなれなかった
わかっていたから大人になれなくても構わないと思ったんだね
生きる才能も死ぬ才能もなかったのは僕も同じだというのに

才能の無い君の最期を見届け、僕はまた夜空をみあげる
あの瞬間ふたりで見ていた夜空と同じような昏さで、星は美しい
無数の星星のどれかに君はいるのだろうか、それともまだ水底か
夜空を越えたら君に会えるだろうか、それともやはり閉塞か

あの頃、星よりも、街灯に群がる蛾を美しいと思った
君は怪訝な顔をしたけれど、僕はこの世でいちばん蛾が好きだった
思えば、君は蛾に似ていた
空は飛べるが星は掴めなくて、だから星に似た人工的な発光体に満たされようとするところが
自由なふりをしながらずっと君は頭痛に悩み、肌寒さを誤魔化すように夜空を見上げていた

たびたび君を思い出した
笑った顔や、真剣な顔や、困った顔
話し方や声、息遣い、笑い声
それらはもう二度と戻って来ないのだと、そこではじめて気がつく
そうして時が経ち君がいたことを忘れて、僕はまた今日君がいないことを思い出してしまった
夜空はいつもそこにあるのに

12/11/2025, 12:24:21 PM