『星になる』
夜空に星が瞬いている。
手元にあるココアが入ったマグカップが温かい。
「ねぇ、星になるって……どういう気分だと思う?」
「んぁ? なんだよ、急に」
私が窓枠に寄りかかって、ポツリとそう言うと、彼は眠そうな声でそう問い返してきた。
「別に……ただちょっと、気になっただけ」
「……そうだなぁ。意外と頑張ってんじゃね」
「頑張る? なんで?」
私が不思議そうに首をひねると、彼は私の側に近寄って来て遠い目で月を眺めながら言った。
「ほら、光るのってさ、意外と疲れるじゃん。だから、頑張ってんじゃねって思って」
「ふぅん……」
「どうしてそんな事を聞いたんだ?」
「そうね……しいて言うなら、」
「しいて言うなら??」
私は一言、ポツリと零した。
「生きているのが疲れたから、星にでもなってみようかと思ってただけよ」
「……え」
「でも、辞めたわ。だって星になって頑張らなきゃいけないなら、あったかいココアがある方がまだマシだわ」
そう言って私は、手元のぬるくなったココアを飲み干した。
おわり
12/14/2025, 10:24:07 PM