ある日男は妖精に出会った。
男はどこにでも居るような平凡なサラリーマンだ。
最近は仕事もプライベートも上手くいかず、雲が月を覆い隠している夜の公園のベンチでぼーっとしていた。
その時、男の目の前に妖精が現れた。最初は珍しい蝶々かと思ったが、明らかにちがう、目の前に飛んでいたのは、人間の縮小版に羽が生えたような生物だった。確か妖精をみるのは吉とされていた気がする…。いや、妖精に心を奪われると廃人になると言われていたか…?考えながらも男は妖精を数え始める。1人、2人、3人…。単位ははたして人でいいのか、匹と呼ぶべきか…男は迷いながらも次々と現れる妖精たちを見続ける。そんなことをしていると妖精の1人が話しかけてきた。
「あなた、私たちが見えるのね。」
「普通は見えないものなのか?」
「今のニンゲンは妖精を信じていないもの。私たちが見えるなんて、何かとても辛いことがあったのかしら?」
「あ…、ああ…。最近ちょっとな。」
「そう。教えて頂戴?」
「実は…会社で―――――。家でも―――――。」
なんで俺…こんなこと話してんだ…?
男はそんなことを考えながらも、口が止まらない。これまで溜め込んできたものがずるずると這い出てくる。
「そうだったのね…。そうだ。そんなあなたに良いこと教えてあげるわ。私たちの中に、ミッドナイトブルーの羽をもった妖精がいるのよ。ミッドナイトブルーの色言葉を知ってるかしら。神秘的、洗練、優雅…。きっとその子に会えたら、あなた、きっと幸せになれるわ。」
「そうか…。ありがとう。」
男はその話を信じてはいなかったが、家に帰りたい気分でもなかった。男はミッドナイトブルーの羽の妖精を探すことにした。
何分たっただろう。空を覆い隠していた雲が少し引き、月が出始めたとき。男は見つけた。空と同じミッドナイトブルーの色をした妖精…。
ミッドナイトブルーの妖精は男の目を見つめながら優雅にゆっくりと舞い降りてきて、小さい体ながら男の額にキスをした。妖精は妖艶な微笑みを浮かべ、羽と同じ色の空に消えていった。
空と同じ色をした妖精が消え、男がはっと気付いたときには、他の妖精も消え、ただ月明かりだけが、男を照らし出していた。
その日以来、男は変わった。仕事に行かず、何処にも出掛けず…、何も食べず…。まるで何かを想うように…。
数日後、男は死んだ。死因は餓死だった。
男が最期に虚ろな目で言ったそうだ。
「ミッドナイトブルーの…あの人…。」
8/22/2025, 11:41:47 AM