首吊りに揺れる足元は、夕暮れに照らされた蜘蛛の巣と、そこに浮かぶ木の葉とを暗示させる。死者の持つ色気は赤の夕日とよく似ている。死者を決定付けるのは鑑賞者であり、香気が腐臭へと変容するのは首から紐が解かれた瞬間である。
首吊りによる自殺者は、考え得る限り最高の芸術家である。彼らは己が肉体さえもその作品の一つにしてしまった。死して星になった者の最期が、まだ星が脇に控える夕暮れ時のことであるなんて、一体どれだけ己というものを知り尽くせば気が済むのか。己が運命を、決して人目に立つことのない些事であると認識し、そしてそうと知っておきながら、そこに途方もない芸術性を付与してみせるなんて。
これこそが彼の世界に対する感謝の念だ。残された者に対する出来る限りの償いだ。それというのも、芸術とは人生というのがどれほど馬鹿げたものであるかを誇示しているに過ぎず、無価値から目を逸らす為の療法としての芸術に死すことこそが、ひねくれた彼の自尊心を満たすに足るからである。
12/15/2025, 10:05:47 AM