これは、希望だ。
彼女が僕を好いてくれるかもしれないという淡い希望。
あり得るわけがない。
あり得てはいけない。
そう思っているのに、それでも期待してしまう。
僕が彼女に何をしたか。思い返すのも嫌になる。あの日、一人で泣いていた彼女を僕はーー。
最低、だ。
あんなことをしても彼女から嫌われるだけなのは判っていたのに。
現に彼女は僕を見るたび、日に日に生気がなくなっていく。
でも。記憶をなくす薬を見つけた。
WEBサイトで売ってた高価なもの。効く保証はない。金だけ取られてなんてこともあるだろう。それでも。これが本物なら、彼女は全てを忘れられる。そうしたら、僕のことを今度は愛してくれるはずなんだ。
クリックするのに迷いはいらなかった。それを水に溶かして彼女に飲ませるのも。
罪を重ねている。
大人しく諦めればいい。僕は狂っているのだから。
僕は、彼女をこんなに狭い世界に閉じ込めた。外から断ち切った。彼女を一人にした。なのに、そんな素振りは見せずに彼女を慰んでいた。
バレたのは写真1枚のせい。ポケットから落ちた、彼女の親友の弱み。
そこからは、もう失墜の一途を辿った。
薬の効能は1日後。だから、明日。明日、また様子を見に来る。
最低な僕でも、確かに明日への光があったから。もしも、上手くいかなければ。そのときは今度こそ、諦めてしまおう。
彼女に死なれるのだけは、嫌だ。
12/15/2025, 12:50:44 PM