祈りを捧げて
朝の光が、カーテンの隙間からこぼれている。
少しだけ贅沢な豆を挽き、丁寧にコーヒーを淹れる。
立ちのぼる湯気の向こう側、
形のない「なにか」に、静かに名前をつけてみる。
ストーブの前で、愛犬のクロが寝息を立てている。
この黒い塊が刻む、穏やかなリズム。
それだけで、世界は十分に満たされている気がした。
祈りとは、きっと特別な言葉を並べることじゃない。
冷えた指先をカップで温めながら、
「今日が昨日と同じように過ぎますように」と、
ただ、それだけを願うこと。
コーヒーの苦みが喉を通る。
クロが薄目を開けて、しっぽを一度だけ振った。
それだけで、私の祈りはもう、届いたのだと思う。
12/25/2025, 1:44:07 PM