花とコトリ

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2/21/2026, 5:56:24 PM

「ゼロからの」

5:42
まだ色のない海。
世界がはじまる前の静けさを、クロの冷たい鼻先がつつく。
「もうすぐだよ」
真っ暗な砂浜に座ると、隣でクロが大きなあくびをした。

6:05
水平線の端が、じわりと滲む。
オレンジでもピンクでもない、名付けようのない光。
昨日までの後悔も、使い古した言葉も、すべて波がさらっていった。
ただ、新しく引き込まれた潮の匂いがあるだけ。

6:15
朝日は、容赦なく今日を連れてくる。
光の粒がクロの黒い毛を金色に縁取った。
なにも持たずに、ここから始めればいい。
真っ白なノートをひらくみたいに、まっさらな心で。

「帰ろうか」
駆け出したクロの足跡を、新しい波がすぐに消していった。

2/3/2026, 1:32:57 PM

「1000年先も」

2026年2月3日。
見上げるほどに高い、透きとおった青い空。そこを泳ぐ白い雲の形を眺めながら、ふと思う。今この瞬間を感じている私の心は、どこへ行くのだろう。

足元では、愛犬のクロが小さくあくびをした。黒い毛並みに冬の日差しが溜まって、そこだけ陽だまりのように温かい。この温もりも、空の青さも、言葉にできないこの静かな愛おしさも。

たとえ私たちが形を変えても、この「光の粒」のような記憶だけは、宇宙のどこかで消えずに漂っていてほしい。

1000年先も。
誰かがふと空を見上げたとき、今の私と同じ、優しい風が吹きますように。

2/2/2026, 3:56:59 PM

「勿忘草」

茜色の境界線。
空がゆっくりと燃え、見事な夕焼けが街を包み込む。
すべてが影になっていく時間。
銀色の光が最後の一瞬を惜しむように、雲の端を縁取っている。

隣には、影に溶けそうなほど真っ黒なクロ。
彼がふいに見上げた横顔に、私は「今」という時間の重なりを感じる。
温かな体温だけが、この曖昧な世界で確かなものだった。

足元に、ひっそりと揺れる勿忘草。
暗がりに沈む前の青い花びらは、まるで誰かが落とした忘れ物のようだ。
「忘れないで」という願いは、過ぎ去る光への静かな抵抗。

夜が来る前に、この紅い空とクロの鼓動を、
記憶の奥深くに、大切に刻みつけておきたい。

2/1/2026, 1:51:17 PM

「ブランコ」

公園の端っこで、古びたブランコが小さく軋んでいる。

近所の子どもたちが、冬の乾いた空気を蹴り飛ばすように高く、もっと高く、空へと漕ぎ出していく。その無邪気な笑い声は、まるで誰にも捕まえられない光の粒のようだ。

足元では、愛犬のクロが不思議そうに首をかしげている。揺れる座面を追いかけようとして、結局、私の膝に冷たい鼻先を押し当ててきた。

「行かないよ」と小さく呟く。

遠くへ行きたいような、ずっとここにいたいような。
ブランコの弧を描くリズムに、揺れ動く自分の心象を重ねてみる。戻ってくることがわかっているから、私たちはあんなに遠くまで足を投げ出せるのかもしれない。

1/30/2026, 2:49:03 AM

「 I LOVE … 」


1月の終わり、透明な風

いつからだろう。
好きという言葉が、こんなに静かな重みを持つようになったのは。


ショパンの光

ピアノの蓋を開け、使い古されたショパンの楽譜を広げる。
指先が触れる紙のざらつき。何度もめくられたページの端は少し丸まって、かつての私の熱情を記憶している。音符たちは、冬の光の中で銀色に輝き漂う。


琥珀色の時間

キッチンでカフェオレを淹れる。
白い湯気が立ちのぼり、窓をうっすらと曇らせる。ミルクの甘い香りが、ささくれだった心をゆっくりと整えていく。


確かな体温

足元では、黒い毛並みのクロが寝息を立てている。
私が名前を呼ぶと、彼は片目だけをあけて、しっぽでトンと床を叩いた。


「I LOVE…」
それは声に出すまでもない、この静寂そのもののことだ。

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