藤月

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【秘密の箱】

 彼女の日課は街を探索することである。

 今日は公園で探そうと辺りを見回すと、小さなガラス片が落ちているのを見つけた。
 ガラス片は太陽の光を反射してきらきらと輝いており、宝石を思わせる。
 彼女はそれを拾い上げ、お気に入りの場所に隠しておいた小さな箱にぽとりと落とした。

 箱は長いこと風雨にさらされていたのか泥で汚れており、ところどころ歪みや破損があるが、彼女は気にもしていなかった。
 それどころか、色々と物を詰めても壊れない丈夫さに満足していたのである。

 箱の中には一体何が詰まっているのかというと、夏の暑さで溶けてしまった飴玉だったもの、近所のゲームセンターで取れるようなプラスチックの石、ほかにもジャムの蓋やチョコレートの包み紙といった人の目にはごみに映りそうなものがあれこれと入っている。

 一度、近所の人間がゴミだと思って箱を処分しようとしたところ、彼女は大層怒ってその人間を執拗に追い回した挙句、頭をつついて大怪我を負わせた。
 さらに、公園に住み着く野良猫が興味本位で箱の中のものを取ろうとした時だって、彼女は小さな箱を守るために奮闘し、お互いの体がぼろぼろになるまで戦い続けた。
 そんな必死さに興が醒めたのか、はたまた己の行為が馬鹿らしくなったのか明け方に猫は退散し、彼女は無事に箱を守り通したのであった。

 傍目にはごみに見えたとしても、彼女にとっては長い年月をかけて集めた大切な宝物である。
 彼女がカラスである以上、その翼と小さな足で探し回る以外の方法では決して手に入らない。人の生活からしか得られないこの宝物は他の仲間たちにも内緒の代物だ。
 彼女は人間に比べて短いその生涯をかけて、自分だけの秘密の宝箱を完成させるのだろう。

10/24/2025, 4:14:45 PM