【太陽のような】※後ほど加筆修正します
炎を閉じ込めたような赤橙色の石。
その石をそっとつまみあげ、光に照らしてみる。
石の中央には砂金のようなインクルージョンが集まっており、光を乱反射することで眩い煌めきを放っている。
サンストーンとはよく言ったものだ。太陽のかけらが地上に落ちてくるならきっとこんな見た目をしているに違いない。
ーーこの石が自宅に届いたのが数日前。
ある日突然、茶封筒に入れられて送られてきた。
差出人は不明。
不思議に思って開封すると、くしゃくしゃのティッシュが出てきたものだから初めはなんの悪戯かと頭に来た。だが、重みに違和感を感じてティッシュを開いたら太陽みたいな石が出てきたのだから唖然とした。
私に宝石を送ってくれるような関係性の人間はいない。ましてや自分で頼んだ覚えもない。
いったい誰がこんなことをしたのだろう。
何一つわからないままだが、封筒を開けてしまった上に差出人の手がかりもないのでひとまず自宅で管理することにした。
【0からの】
新卒から勤めていた会社を辞めた。
最初の一週間は天井を見つめていたら終わっていた。
次の一週間にはもうあんなところに行かなくていいんだとようやく現実を受け入れることができた。
少しだけ休むつもりで悠々自適に過ごしているうちに数ヶ月が経った。
手元には雀の涙ほどのお金しか残っていない。
いい加減、次の仕事を探さなければならないのは分かっているが、そう簡単に重い腰は上がらなかった。
求人を見ていたはずの画面にはSNSの投稿がずらりと並んでいる。いつの間にか部屋は暗くなっていた。
焦点の合わない目で画面をスクロールし続けてどれだけ経っただろうか。
あるひとつのライブ配信からけらけらと笑う声が聞こえてきた瞬間、動かしていた指がぴたりと止まった。
小さな画面の中で、少女が楽しげに話している。
彼女は体を左右にふわふわと揺らしながら、リアルタイムで流れてくるコメントを読み上げてテンポよく話を広げていた。
しばらく流していると分かったが、先ほどの会話はMCみたいなもので、どうやらこの配信は歌枠というものだったらしい。
そのまま配信を見ていると、聞き覚えのあるイントロが流れてきた。学生時代によく聞いていた歌だ。
彼女の歌はお世辞にも上手いとはいえなかった。
が、弾けるような笑顔で、爽やかに、心底楽しそうに歌う姿が何とも眩しくて、一瞬で心を奪われてしまった。
それから、彼女のSNSをフォローし、告知は毎回チェックして必ず配信を見に行くようになった。
歌を中心に活動しているみたいだけど、個人で活動していることも影響してか伸び悩んでいるようだった。
でも、癖はあるがあの歌声と無邪気な笑い声で人を明るい気持ちにさせることができるなんて立派な才能だ。
一生懸命頑張っている姿を見ていると、特別な才能を持ち得ない凡庸な自分にも何かできるのかもしれないと思えた。
あれからいろんな会社の面接を受けにいったが、そう上手くはいかなかった。
ときには今まで何をしていたのか詰められ、経歴を見て冷たく突き放されるようなこともあった。
だけど、諦めずに挑戦していたら仕事が見つかって、以前より良い環境で働くことができるようになった。
忙しさから以前ほどの頻度で配信は見れなくなってしまったけど、今でも彼女の歌が心の支えとなっている。
貴女に勇気をもらって、貴女のファンとして恥じない自分でいたい、その一心でようやくここまで来れたよ。
出会えなかったらきっと暗い部屋に閉じこもったままだった。
光を与えてくれて、ありがとう。
【祈りの果て】
愛しい人。
いつだって前を向いて走り続けている。
自分のような人間に好かれるなんて気の毒だ。
一方的な想いを届けるつもりはない。
自らの内に閉じ込めた気持ちは身勝手なもの。
小さな承認欲求につぎはぎの理性で蓋をする。
あの人はこちらを見ない。
立ち止まり、後ろを振り返ってばかりの人間とは見ている世界が違う。
邪魔をしたくない。
気づかれたくない。
誰のものにもならないで。
見えないところで幸せになって。
いつか、遠くに行ったあの人の隣にいなくとも。
ささやかな祈りが歩む道を照らしますように。
【心の迷路】
自分は一体何がしたいのだろう。
ここ最近の悩みである。
幼い頃から大抵の人が選ぶ道を"普通"として歩んできた。
小学校の頃はひとりぼっちにならないよう友達を作り、中学では入りたくもない部活に入った。
高校や大学を選ぶ時だって、己の興味が惹かれることも確かにあったが、心の奥底には"みんなも行っているから"という気持ちが強くあったと思う。
学生時代をクラゲのように生きてきた私には何も残っていない。思い出せない。
だからこそ、この先にある道は自分の意思で選ぶ必要がある。
私の道にはきっとたくさんの選択肢があった。
今歩んでいる道が正しいのかも分からない。
目の前にある道は確かに一本なのに、踏み出せば途端に壁にぶつかる。
道を開拓してもいいし、引き返してもいい。
周囲を探せば新たな道が見つかるかもしれない。
ただ、新しい道は自らにしか選ぶことができない。
人生の歩み、それはまるで迷路のようだ。
【光と影】
データ消えてしまったので保留