—雪明かりのロマンス—
部活中にガットが切れた。
仕方なく、帰りにスポーツショップに寄り道していたら、すっかり遅くなってしまった。
雪で覆われた地面を、街灯が綺麗に照らしている。夜道は思ったよりも白い。
「えっ……」
町を歩いていると、少し前を歩く太田の姿が見えた。同じクラスメイトであり、私が想いを寄せている男子だ。
隣には女性も一緒にいた。チラチラと太田を見るときの横顔に、見覚えはない。
雪明かりのせいではっきりと見える。それでも私は、何故か後をつけていた。
前の二人は、駅に着くと別れた。
太田は女性に手を振り、女性は何回か礼をして去って行った。
「あれ、何してんの?」彼にバレた。
少し近づきすぎたのか、彼が振り返った時に目が合ってしまった。私はスポーツショップの手提げを見せた。
「ちょっと寄り道してたんだ」
「そうなんだ。俺も帰りだからさ、一緒に帰ろうよ」
「いいよ」
なるべくいつもの私でいられるように振る舞った。必死に心を落ち着かせる。
「太田は何してたの?」
あまり聞きたくはなかったけれど、聞かなきゃ後悔するような気がした。
「俺は道案内してた。携帯の充電がなくなって、場所が分からなくなったんだってさ」
「へぇ、優しいね」
心の中でホッと息をつく。なるべく表情を緩めないように気をつけた。
他愛もない話をしながら、二人で帰った。
ただ一緒に歩いているだけで、胸が温かい。こんな夜を忘れたくない、と私は思った。
お題:雪明かりの夜
12/27/2025, 3:28:54 AM