どこへ行こう
せっかくの休みだし、買い物でも行こう。去年は何を考えてこの服を着ていたのかと問いたくなるほどのセンスの無いワードローブに文句を言いながら出かける準備をする。おしゃれな服屋に行くなら、それ相応の格好してないと、話しかけられた時になんか気まずいし。どこへ行こう…そんなことを考えながら歯を磨いていた時、ふとLINEが鳴った。
「いまなにしてる?」
変換も惜しいほどの彼のせっかちさと、独特のイントネーションでその文字列を話す彼の姿を想像しては少し口元が緩む。
「服買いに行こうとしてた」
自分で打った文字を読み返して送信ボタンを押す…前に全て消した。全く違う文を打って、返信を待つ彼のイライラを抑えるために今度は早く送る。
「何もしてない」
嘘ではない。服を買いに行こうとしてただけで、今は何もしてない。緩みそうになる口元を抑えながら歯磨きも終えたのだから、今は本当に何もしてない。
「うちきて」
間髪入れずに送られてくる彼のメッセージは自分の暇を見越してのこと。そんなにいつもいつも暇じゃねぇよと思いつつ、彼のためになら暇になってなれてしまうのだから説得力が無いなと感じた。さっきまで着ていたよそ行きの服を脱ぎ捨てて彼のパーカーを羽織る。あーあ、本当にめんどくさい。だけど、どこへ行こうか考える手間が減ったと思えば良いのかもしれない。
12/21/2025, 4:12:58 AM