フィクション

Open App


『太陽のような』


 
 私には好きな人がいます。彼は、クラスの中心にいる様な人...。ではなく、細く言えば人気者の脇にいる人です。
 彼は場を盛り上げるために上手く仕切ったり、誰にでも対して柔らかい笑顔をみせたり、そんな彼を「良い人だな」と私は思いました。

 そんな、良い人に対してですが、当初の私は「ただ」のクラスメートと感じていました。

 良い人は、殆ど明るい人たちと連んでいます。なので、教室の片隅に友人と本の話をする私とは、何も接点がありません。対称的なのです、影と陽みたいな。

 良い人が「好きな人」と置き換えられたのは、昼休み時間で図書館にいた時でした。


図書館は好き。

落ち着いたところ。

棚にズラーっと並んでいる本。

ページを捲る音。


 そんな、手を伸ばせば無限の世界が広がる本を胸に、図書委員さんの下に行くところでした。本棚の隅に見覚えのある人が本を物色しています。

 「誰だろう」

 その場で立ち止まり、本棚の影から彼を見ます。「良い人」でした。背が高いので猫背気味になっている彼を見て、微笑みました。
 クラスでは、朗らかな声も図書館では無言で本のページを開いているのです。そりゃあ、人の意外な一面を見れたと嬉しく思う。

 私は、彼が本を好きなのかな?と純粋に思い声をかけましたが、直ぐに後悔します。

 中学入ってから、異性と碌に話してない__!

 男子と挨拶はするけど、親密になるまで会話はしたことがない。だけど、声をかけた私に彼は「何?」と耳を傾けてくれています。

 慣れない男子相手に私の鼓動は早くなりますが、相手にバレない様、落ち着いた声で言います。

「本が好きなの?」

 少し浮ついた声、緊張で目が泳いでいます。

 「うん、好きかな」

 そう言って、彼は頬が緩み、話を続けます。

 「図書館は良いところだよね。気軽でいられる。」

 「私も、そう思う...」
 
 「君も本が好き?」

 勿論。私はそう事実を答えます。それを聞いた彼は嬉しそうに微笑みました。

 「高橋さん。今から言う話は内緒ね」
 
 「俺ね、本が好きなんだ。でも、周りの奴らは馬鹿にするんだ。可笑しいと思わない?こんな楽しい経験を滑稽と笑うんだ」

 「わあ...」

 それ、地味に傷つくやつ__。私は苦笑して、彼に共感した。今時、図書館に通う同級生は滅多に見かけないからね。逆に休み時間はパソコンか寝てる人ばかりである。

 「そういえば、高橋さんって、いつも本読んでいるよね。オススメとかある?」

 「うーん。ジャンルは何が良い?」

 「天体」

 「星の図鑑は見た?」

 「見てない」

 「じゃあ、それおすすめ!写真がとても綺麗なの、しかも授業で出てくる単語ばかりだから、来週の小テストに役立つかも」

 「マジ?じゃあそれ見るわ。ありがとう、高橋さん!」

 そう、はっきりと私の顔を見て言います。それが太陽のような笑顔で私の胸が不自然な程、高鳴ります。

 そうやって会話をしているうちに、昼休み時間が終わりを迎えます。予鈴がなり始める前に、私たちは小走りで教室に向かいます。

 席に着く頃には、号令が掛かっていました。机の上にノートを開き、自前のシャーペンで手中で回します。

『ありがとう、高橋さん!』

 頭の中で、彼の笑顔が何度も浮かびました。その度に口角が上がったので、周りには変な人だと思われていないことを心から望みます。


 __完

2/23/2026, 9:00:25 AM