感覚はとうの昔に無くなっていた。
手を擦り合わせても
それが自分の手だとは認識出来なかった。
「まだ起きてる?」
彼女の腕が少し動いたように見えた。
ここから見える景色は
これ以上に無いほど白く、荒く、我々を突き刺している。
「 」
ああ、肺がダメになってしまった。
ふと彼女の方へ顔を傾けると
彼女も少しこちらに傾きながら
分厚い手袋を着けた手をこちらに倒してきた。
人気もない、音も聞こえない雪山。
我々が白い衣に包まれても
その手とこの身体の間に挟まることはなかった。
私は幸せ者だった。
さいごの温もり
12/9/2025, 4:33:47 PM