こはくとう

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なんだったっけ-。
僕の朝はいつもこう始まる。
寝て起きると、昨日の事が思い出せない。
昨日の言葉も、感情も。

「私がまいにち教えてあげる!昨日のこと…!」
いつも昨日の事を覚えていない僕のことを気の毒に思ったのだろうか。クラスメイトの女の子が、いきなりそう提案してくれた。
 それから、僕と彼女はよく話すようになった。昨日の事だけじゃなくて、未来の話もした。将来何をしたいのか、どこで暮らしたいのか-。昨日すら覚えていられない僕にとって、「未来」はとてもとても遠いものだったけど、彼女と一緒にいると、未来だって、とても近くに感じられる。彼女は僕にとっての道しるべだった。

 ある日。
「あの子、病気が悪化して亡くなったんだって。」
「あの子」とは僕といつも話してくれていた、あの女の子だった。彼女はもう治らない病気を患っていたが、毎日学校にきて、残された時間を過ごしていたそうだ。彼女のことを思い出そうとする。将来は画家になりたいと言っていたな、色々なところにいって、初めてのことをたくさんしてみたいとも-。よし、まだ覚えている。
大丈夫。だいじょうぶ。
君のことは、僕がきっと忘れないから。
忘れないよ。だいじょうぶ。だいじょう…

8/20/2025, 11:47:14 AM