海月 時

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「今日も明日も、私は生きる。」
私は今日も、鏡の中の自分に暗示をかける。

「おはよ~。」
学校に着いたら、いつも通り友達と挨拶を交わす。そして他愛のない会話をする。これが普通の朝。私の朝。
「午後の授業だる~。」
昼放課、友達と机を囲みながら昼食をとる。そして冗談や学校への不満を言い合う。これが普通の放課。私の放課。
「またね~。」
放課後、友達と別れを告げる。たまに遊びに行く事もあるが、今日はなし。明日の授業内容について話し、帰路に着く。これが普通の放課後。私の放課後。

「普通の人生で良い。」
大人は皆そう言う。私もそう思ってる。でも心の中では、非現実的なエピソードを求めてる。これっておかしい事?

「花畑に咲く花達、花瓶に咲く一輪の花。君はどっちが大切な命だと思う?」
昔、誰かに問われた言葉。その時、私は後者を選んだ。一輪だけの花の方が特別感があるからだ。なれるなら私もそんな存在になりたいからだ。今でもそう思ってる。でも心の中では、自分は特別になれないと分かってる。

寝る前の十分間。私は鏡の前に立つ。そして自分を見つめる。どこを見ても平凡で嫌になる。それでも目は逸らさず、口を開く。
「お前は特別にはなれない。お前は一生、どこにでもいる平凡な人間のままだ。それでも、生きてる。いつ踏み付けられるか分からない小さな命で、生きてる。花瓶なんて小さな世界よりも、大きな世界で頑張って根を張って生きてる。今日も明日も、私は生きる。」
毎晩行うこの行為は、自身への暗示だ。そしてエールだ。負けない為の、投げ出さない為の。

私は抱えている。皆抱えている。特別ではないけれど、普通のものだけど、唯一のもの。そんな小さな命を抱えて生きている。

2/24/2026, 3:43:04 PM