大狗 福徠

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紅の記憶

思い出す貴女はいつだって夕焼けの中にいる。
青いリボンの巻かれた麦わら帽子をかぶって、
私に背を向けた茶髪のロングの貴女。
靡く真白のワンピース。
肩から覗くひまわりとネモフィラの花束。
全てを塗りつぶす紅の中で、
貴女の纏う色だけが鮮明に焼き付いている。
恋などという下賤なものではない。
愛などという高尚な思いでもない。
笑顔の似合う貴女。
私ではない誰かに微笑む貴女。
今はどこにいますか。
誰かと幸せになっていますか。
愛しい我が子を抱いているのですか。
大切な誰かと手を繋いで歩いたりするんですか。
どちらにせよ、もうお目にかかることはないでしょう。
夏の貴女よ、どうかお幸せに。

11/23/2025, 7:56:01 AM