「母ちゃん早く早く〜!」
「はいはい」
ある街に仲のよい親子があったとさ。
「今日な、俺な、逆上がりできてん。すごいやろ?」
息子は上機嫌に母親に話す。
「あんたすごいな。母ちゃんようやらんわ。ほんま運動神経いいだけあるわ。父ちゃんに似たな」
母親は、優しく息子に声を掛ける。家のなかでは、暖房が軽くついてる。
「俺、大きくなったら父ちゃんみたいに優しくてかっこいい人になりたい。なれるやろ?」
息子は、口を大きく開けて笑う。前歯が何本か抜けている。
「そうやね〜。あんたならできるんちゃうかな。そんときは、母ちゃん守ってもらうで!」
そう言って、母親は台所に向かう。
「何食いたい?」
「カレーが食いたいな」
「ハイよ」
息子は、テレビをつけて子供向け番組を見る。
「ただいま」
「父ちゃんおかえり!」
「お疲れさん、ビールいるかい?」
父親の帰りに、家族そろって迎える。
「ただいま、どうした?いいことあったのか?
母さん、ビールお願い」
「はいはい」
「父ちゃん、俺ね俺ね!」
そんな時間が過ぎていく。
寒いはずの廊下も気にならないくらいの暖かさ。
「すごいじゃないか!」
「でしょでしょ!」
「ご飯できるよ!」
「「はーい」」
いつか俺も大人になった。ふとした時、この頃を思い出す。
誰かと笑い合って、助け合って、ささえ合う。
その時感じた暖かさは感じた時からは離れているけど、
遠くにあっても心は感じるから。
今更遅いなんてことがないように、人の暖かさを知り、将来も生きていたいな。
12/24/2025, 2:58:13 PM