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Love you(TOV)注:微腐

レイヴンはいつだって軽々しく愛を語る。
戦闘中だって、女性陣が少し傷つこうものなら、
「愛してるぜ!」
と、癒しの矢を飛ばす。
まぁ、これは詠唱なのだけれど。
リタなどはレイヴンの出鱈目詠唱に最初はびっくりして、次に呆れて、ウザがって、最近では慣れすぎて無反応になった。
癒しの術であるし、確かに愛はこもっているのだと思う。慈しみというか、そういう愛が。
ユーリはレイヴンからその矢を受けた事がなかった。
最初はその事実を何とも思わなかった。
むしろ男に「愛してるぜ」などと言われて愛の矢を飛ばされる事が、気持ち悪くもあった。
そう、思っていた。

けれども、カロルやラピードにも愛の矢を飛ばしているのを見て、少しモヤつくようになった。
(俺だけ避けてるとか効かないとか、ないよな?)
少し、だいぶ気になったが、確かめる術はなかった。

「ユーリ!!!」
カロルの悲鳴が聞こえて、ユーリはとっさに身をひねった。ドンという衝撃があって、鳩尾に角がめり込む。勢いでユーリは吹き飛んだ。
「ぐぅっ!!」
木に激突して息がつまる。
頭から血が流れてきて片目の視界を塞ぐが、気を失うわけにはいかなかった。
「ユーリ!!」
「馬鹿!前見ろカロル!」
「わわ!」
回復のためにユーリに近づこうとしたカロルに、魔物が突進してくる。カロルは前転でかろうじて避けた。
「愛してるぜ!」
どこからか声がして、癒しの矢が飛んできた。
サクリと頭に当たり、あたたかな光がユーリを包む。
レイヴンだ。
避けられていた訳ではない、その安堵が胸に広がる。
当初気持ち悪いと思っていた詠唱も、全然悪くない。
むしろ、待ち望んでいたものが与えられた喜びがあった。
「おっさん!さんきゅ!」
傷が全て治るわけではないが、痛みは消えた。
まだ十分戦える。
ユーリは元気に立ち上がった。
「青年!無理しなさんな!愛してるぜ!」
追加の矢が飛んだ。威力は大きくないが、詠唱が短くて中距離まで届く。戦況を支える、有能な技だった。
走り出したユーリを矢が追尾して、また頭にサクリと刺さる。
(使えるじゃねぇか)
ユーリは楽しくなって、ニヤリと笑った。

「おっさん、回復助かった」
苦しかった戦闘が終わり、ユーリはレイヴンに礼を言った。レイヴンはヘラリと笑って、
「いやー久々にピンチだったわね。嬢ちゃんいないと回復役少ないものね。おっさんもやる時ゃやるのよ」
と、胸を張った。
「ああ、助かった」
素直に言うと、レイヴンは己の身体に両手を巻きつけてブルルと震えた。
「……なんか怖っ!青年が素直とか、怖っ!何?毒でもくらってる?混乱とか?愛してるとかキモっ、とかないの?!」
「俺を何だと…」
そう言いかけて、ユーリはハッとした。確かに彼の詠唱に冷笑していた時期がある。そのせいで彼は自分に回復を使わなかったのかもしれない。
だとしたら自業自得であった。
けれど、これからはもっとあの矢を浴びたい。
なので、ユーリは素直に言った。
「いや、むしろおっさんの愛、良かったぜ」
「はぁっ?」
「これからもよろしく頼むな」
「は?あ、え?っと?」
いつものレイヴンらしくなく言葉に困っているようだったが、少し嬉しそうに、
「そ?」
と、はにかんだ。
「おう」
胸に来た。
普通に返事ができていただろうか。
(その顔は反則だろ)
おっさんを、可愛い、と、思ってしまった。

何だこれ。



Love you

2/23/2026, 12:30:43 PM