『祈りを捧げて』
祈りを捧げて、数年が経った。
私以外に、祈る者は居ない。
―――神は既に死んだのだ。
とある大災害が起きた。
ノアの方舟の再来のような、惑星一つを舐めまわすように訪れた災害。
人類はなす術もなく、アリの大群のように蹂躙された。
生き残った者達が、再建しようとするも、復興に必要な施設はことごとく破壊されてしまっていた。
諦めた人々は、世紀末のように限られた物資を強奪し、秩序ではなく力による支配によって社会を形成していった。
……神なんてクソくらえだ。
それが、世間の一般的な意見だ。
それでも、私は祈り続けた。
私のおばあ様は、熱心に信じていたのだ。
神様はいらっしゃる、だから常に祈り続けなさい、と。
そして、今日。
いつもの祈りを終えた私に、いつもと違うことが起こった。
「いってて! うわ!? ここ、どこ!?」
見慣れぬ姿の若者が、目の前に居た。
「あ、えっと……すいません、シスター? さん。ここって、どこですかね??」
「あなたが、神様でしょうか??」
「はい?」
祈りを捧げて、数年。
私の願いはようやく天に届いたようだ。
「流石、神様です。干ばつに喘ぐ村に雨と井戸をもたらすなんて……」
「いや、神様じゃないですってシスター。オレはただ、そういう能力があるってだけで、普通の人ですって」
「あぁ、謙虚なその姿勢。まさに神様そのものですね……」
「えぇ……なに言ってもこうなんだよなぁ」
神様はすごい方で、この壊れた世界を次々に修復してくださった。
たまによく分からない言葉を仰られているが、きっと神様界での言葉なのだろうと思っている。
○○○
「異世界チートって本当にあったんだなぁ……にしても、一番大事な要素が死んでんだよなぁ……」
オレはそういって周りを見渡す。
周りには最初にあったシスターをはじめとして、色んな人? に囲まれ、ときには美人? と言われる方々から熱烈なラブコールを受けたりもしていた。
まあ、断ったが……だって、
「耳だけじゃなくて、顔面までケモノとか、オレはそこまで重度のケモナーじゃないんだって。異世界チートって、そこまで甘くないんだなぁ、トホホ……」
誰か、重度のケモナーの地球の日本人の人。
オレと交代してください、切実に。
モテなくても良い! 可愛い女の子の生足が見たーーい!!!
おわり
12/25/2025, 7:42:04 PM