『明日への光』
明日への光が眩しくて、目に染みた。
ようよう白くなりゆく山際は、なんて言葉は誰の言葉だっただろうか。
僕は今、山に登って白湯を片手に朝日が登るのを眺めていた。
たった一人、生き残った僕だけが、太陽を眺めて涙を流す。
「あぁ、みんな死んでしまった」
口に出してみると、本当に終わったのだな、という気分が心を支配する。
随分と酷い出来事だった。
よくあるキャンプに来た筈だった、はず、だったのだ。
まさか、楽しいだけのキャンプ地が、そこに一人殺人鬼が紛れ込むだけで密閉された檻、クローズドサークルになるなんて、誰にも予測出来なかっただろう、出来ていたら来なかった。
既に鼻が馬鹿になっている。
脳だって麻痺している。
ただ、唯一。
目の前に、殺人鬼によって晒された君の首と視線を合わせる。
蛮族のトロフィーのように、木の枝を突き刺し棒付きキャンディーみたいにされてしまった、物言わぬ君。
「お前だけは絶対に助けるから」「キャンプになんて誘ってごめん、ごめんな」「お前のこと、最初は嫌いだったけど。今は生涯で最高の親友だって思ってる」「……生きてくれ、頼む」
たった一晩、六時間にも満たない時間が、まるで人生の走馬灯のように駆け巡り、何度も何度も、壊れた映画の再生テープのように僕の中で繰り返される。
既に光を失った君と、死んだような瞳の僕。
それでも、太陽は登って、明日への光が差し込んだ。
生きなくてはいけないのだ。
君の分までも。
太陽の光が……どこまでも目に染みた。
おわり
12/15/2025, 7:08:31 PM