そよ風は
春の暖かさを届けてくれるけど
桜はしっかりと
時期を理解していて、
まだ咲きそうにはなかった。
梅はもう咲いているけれど。
満開の梅の木の下で
見かける度に読んでいる本が
変わっている人がいた。
その人はいつも梅の木の下にいて、
本を読んでいた。
SFが多いけど、
たまに普通の小説もあって
遠くから見ていて飽きなかった。
少し前の雨の日、
さすがにこの雨の中で
本は読まないだろうと思っていた。
けど梅の木の下には
変わらず本をペラペラとめくり、
傘をさしていたその人がいた。
あの時は驚いた。
家やカフェで読んだ方がいいだろうに。
ふふっ、と
部外者で通りすがりでしかない私は
遠くで笑っていた。
こういう変わらないものの下で
変わらずにいるってのが
素敵だと思った。
"Good Midnight!"
梅の木の下で本を読むあの人は
まるで春の太陽のような
眩しくてあったかくて
近づけない人。
近づいてしまったら
あの人の変わらない日々に
私が入り込んでしまって、
消えてしまいそうだから。
2/22/2026, 5:17:10 PM