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寒さに強いという自負があるオレでも、さすがにその日は寒かった。


もちろん手袋とかカイロとか、そんなものは持ってなくて。
悴む指先を、吐き出す息の熱で温めていた。

ひたすらそうしていたら、不意に目の前に手袋をはめた手のひらが差し出された。
「え」と声を発して隣を見ると、何でもないような顔をした相棒が、
「寒いんだろ?」
と一言。
まごついていると、「こっちのほうがいいか?」と、手袋を外して、また差し出してきた。



なんで、という言葉が出かかる。
普段はこんなことしないのに。
さっきだって、そんな素振りなかったのに。




ずるい。ずるすぎる。
でも、そんなとこが、大好き。


泣きそうな心を押し込めて、何でもないような態度を作って、…でも隠しきれない嬉しさを伝えるように、手を握った。


【手のひらの贈り物】

12/19/2025, 12:13:41 PM