たーくん。

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鏡の中に凍ったまま閉じ込められた彼女。
原因を聞くため、彼女に鏡を渡した魔女の元へ向かった。
「歳をとらず今の若いままの姿でいたいって言うから、願いを叶えてやったまでさ」
魔女は嘲笑うように言った。
どうすれば彼女を鏡から出られるか聞くと。
「そうだねぇ……歳をとってもいいと思えるようになったら出てくるんじゃないか?まぁ無理だと思うがね」
ヒッヒッヒッと更に嘲笑う魔女。
歳をとってもいいと思えるようになったら……か。
それから俺は、常に鏡を持ちながら生活をした。
楽しい生活を見せれば出てくるかと思ったが、なかなか難しい。
なぜなら、彼女と共に同じ時間を過ごせないから。
鏡に話しかけても返事はなく、ただの独り言になるだけ。
虚しい気持ちになるだけだけど、それでも俺は諦めなかった。

……あれから何年経っただろう?
結局彼女は鏡から出てこず、俺が歳をとる一方で、彼女は変わらない。
もう鏡を捨ててしまおうかと考えたこともあったが、やっぱり諦められなかった。

……私はもうおじいさんになってしまった。
彼女は、鏡から出てこない。
私が見せてきた日々の生活が悪かったのか?
それとも彼女への想いが足りなかったのか?
もう、何も分からない。
私は病で倒れ、身体が動かず、ベッドから出られなくなった。
枕元には鏡を置いている。
彼女は歳をとらず若いままで、あれから変わっていない。
私だけ、変わってしまったな……。
だんだんと眠くなり、目を瞑る。
「あいつからあんたを奪おうとしたが、まさかそこまで想ってるとはねぇ……。私の負けだ。来世で彼女と会えるようにしてやるから、それで勘弁しておくれ」
最後に聞こえたのは、魔女の声だった。

12/27/2025, 11:30:03 PM