たくちー

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 万病を防ぐと云われるリボンは重さを感じさせず、蝶々結びの輪っかは左側が少し膨らんでいた。
北極星に背を向けて歩き出す。
文字を打つ左手から携帯を地面に叩きつけたくなる。
"ちゃんと心配しろよ!"と寝ている親をメールで叩き起こしたくなる。曲がった首にリボンが食い込む。両方の輪っかを引っ張り、さらに首を締めつける。結び目がキツくなりすぎて緩められない。煩わしくなり歯で紐に噛みつく。奥歯でギリギリと削るがどうしようもない。鋏で切る。乱れた呼吸と掻きむしった頭髪と千切れたリボン。全てを乱雑に結んで思いきりぶん投げる。軽かったリボンは重力に引かれて坂の上を転がっていった。全部消えてなくなれ、ばーかっ!
心の叫びは誰にも届かず、ふらつく頭でその場に崩れ落ちる。
ボクを否定するなよ…なんで分かんないんだよ…



題『時を結ぶリボン』

12/20/2025, 7:05:09 PM