時を結ぶリボン
10月4日。
朝の光が、窓辺で眠るクロの背中に落ちている。
黒い毛並みが、一筋の銀色に光った。
それはまるで、過ぎ去った時間と今を繋ぎ止める細いリボンのよう。
10月12日。
湯気の向こう側で、コーヒーが静かに揺れている。
一口含むたび、心のささくれがゆっくりと解けていく。
「ねぇ、クロ」
呼びかけると、彼はあくびをひとつして、
ただ静かに私の一部を肯定してくれる。
11月2日。
私たちはいつも、目に見えないリボンを編みながら生きている。
コーヒーの苦みも、クロの温もりも、
すべては「いつか」へと続く、愛しい結び目。
流れる雲を眺めながら、
今日というリボンを、私はそっと指先に結んだ。
12/20/2025, 4:33:25 PM