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日も落ち外が真っ暗になった今、帰ってくると電気も点けずにゆらゆら揺れる火を見つめる彼の姿があった。
「っ、え?智くん?」
「んあ、しょおくん、おかえりー」
俺の声に気づいた智くんはふにゃふにゃと可愛らしい顔で手を振っていた。
「あなた、電気も点けずになにやってんの」
「えー?ふふ。たまにはいーでしょー?こういうのも」
イマイチ彼の考えていることが分からないが、まあ楽しそうならそれでいっかと考えを放棄した。
「ね、そこに突っ立ってないでこっちきなよ」
床に手をポンポンと叩いて隣に来るよう促した。
「これ見て何が楽しいの。良さが分かんないんだけど」
「もー、翔くんは全然ロマンチックじゃないなあ。このゆらゆらしてて消えそうで消えない力強い炎ってカッコいいじゃん」
俺には到底理解できない。このロウソクからそんなことを感じ取れるとは…やっぱり考え方や感じ方は全然違うんだなあ。
「…まあいいけどさぁー。飽きたらさっさと火消してご飯食べよ?」
「もお、なんか冷たくないー?…う、ご飯って聞いたらお腹空いてきた」
ぎゅるる、と智くんのお腹が鳴り、少し笑ってしまった俺を見て、へへ、と恥ずかしそうに笑った智くんはふぅーっと火に息を吹きかけた。

12/23/2025, 12:57:59 PM