しゆカフェ 冬眠の準備中

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真っ暗な道
奥に微かに光らしきものが見えそうで見えない
僕と君は手を繋いで歩いていた
ゆっくりと亀よりもカタツムリよりも
遅く遅く遅く
雪を固めるように
「ねぇ、いつまで僕についてくるの?」
『ずっと』
「ダメだよ、君は戻らなくちゃ」
『私も一緒に行くよ』
「悪いのは全部僕なんだ、だから君は来ないで」
『そんなに泣きそうな顔しないでよ』
『わかった、私はもうついて行かないから最後にあなたの笑顔を見せて』
「君も泣いてるじゃないか」
泣き笑いになってしまったが
感動の別れ的な感じでいいのではないかと思った


僕らが通り魔に刺されたのは数時間前のこと
君は悪くない
僕がいつもと違う道を通りたいなんて言ったから
ごめんね
君にだけは生きていて欲しい
最後の願いだけ叶えさせて
じゃあね


君は僕とは反対側の道に歩いていった
何度も何度も振り返りながら
笑顔かどうか分からなくなるまで泣いて
光の回廊に向かっていく
僕は多分死ぬだろう
だから最後に言うよ


「僕のことを好きになってくれてありがとう」

12/22/2025, 12:51:09 PM