『お気に入りのあの子』
「それでな、あの子めっちゃ強いんやで。いやぁ、成長が楽しみやわぁ」
そう言って笑う彼女。手に持ってるグラスの中の氷がカランと揺れた。
私がふーん、と返事をすると彼女は唇を尖らせた。
「なんや、そんな興味無さそうに」
「そんなことないですけど」
そう言って、手元のお酒を口に入れる。炭酸故の刺激が喉を通った。
どうやら彼女は最近、お気に入りの子を見つけたらしい。その子はとても楽しそうにバトルをし、かつ、とても強いらしい。
私も以前その子のバトルを見てきた。彼女が気に入るのはどんな子か気になったのだ。結果からいうと衝撃を受けた。私は基本的にバトルが苦手だが、その子のするバトルはとてもワクワクした。楽しそうに戦う彼女から目が離せなかった。
だから……彼女が気に入るのも分かった。
「だって、私もあの子のバトルを見てきましたから。とても面白いですよね。あの子」
「…はぁ!?」
少しの間を置いて、彼女が大きい声を上げた。うるさいですよ、と注意をすれば大人しく席に座り直したが、顔は顰めたままだ。
「あのバトル嫌いなあんたが!?バトルを見て面白いと思ったんか!?」
「嫌いだなんて。苦手なだけです」
「同じやろ」
「違います」
彼女ははぁ〜と大きいため息をつくと机に突っ伏してぶつぶつを何かを言い始めた。
これは酔ってると確信し、私は店員さんにお冷を頼んだ。
「うちのバトル見ても、何も感じなかった癖に……」
彼女がこちらを恨めしそうな目で見ていることには気づかなかった。
【お気に入り】
2/17/2026, 12:56:02 PM