—想いを束ねて—
ある男子の近くにいたい、という理由で私はマネージャーになった。
そんな不純な目的で野球部に入部したけれど、意外にも、マネージャーの仕事自体に魅力を感じるようになった。
「ナオミ、終わりそう?」同級生のミオが訊いてきた。彼女もマネージャーだ。
一旦作業する手を止めた。
「うん、もうすぐね。そっちはどう?」
「こっちもあとちょっと。何とか無事に終わりそうだね」
私達は、明日から始まる最後の大会への激励を込めて、サプライズを用意している。
練習後のミーティングで、千羽鶴と応援メッセージを渡すのだ。
「ちょっと休憩しようか」
私は麦茶を飲みながら、窓からグラウンドを見た。選手達はノックを受けていた。
ここ、マネージャー室はバックネット裏の、グラウンドより少し高いところにあり、全体がよく見える。
みんなの声と、ボールに喰らいつく姿がそこにはある。今日も皆、頑張っている。
「またキャプテン見てる」ニヤニヤしながらミオが言う。
「別に、あいつだけじゃないし」
これまで頑張ってきた皆の姿を、私は近くで見てきた。
だから私も皆のために頑張ろう、そう思った。
「さ、続きやろう」
そして時は流れ、あっという間に日は暮れた。何とか私達は完成させることができた。
紐に括った千羽の鶴。
そしてマネージャーや監督、先生や生徒達から集めたメッセージ。メッセージはリボンに書いてもらった。それを一つに束ねている。
「じゃあお前達、マネージャーが渡したい物があるそうだ。キャプテン」監督が言った。
三年生の私とミオが渡す事になった。ミオが千羽鶴で私が応援メッセージ。
「ありがとう。明日絶対勝つから」
キャプテンのハヤテが、それを受け取ってそう宣言した。
「頑張れ!」私は彼の目を見て言った。
思わず涙が出そうになった。
「この野球部は色んな人から応援されている。その期待に応えられるように、明日の試合、絶対勝とう」監督が締め括った。
選手達の大きな返事が聞こえる。
皆の努力が実を結びますように、私は心の中でそう願った。
お題:時を結ぶリボン
12/21/2025, 6:48:18 AM