川柳えむ

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「今年はサンタさんに何をお願いするの?」
 今年引っ越してきたばかりで、まだ周りに慣れていない。友達とも離れ、さぞかし寂しい思いをしているだろう。
 せめてクリスマスだけでも盛大に。プレゼントも豪華にして楽しんでもらおうと、お母さんが女の子に尋ねた。
 女の子はその言葉にすぐさま目を輝かせた。
「キラキラしたもの!」
 キラキラしたもの? 宝石とかそういう?
 さすがにそれはまだ早い。おもちゃの宝石でいいだろうか。
 そうしてプレゼントを決め、クリスマス当日がやって来た。
 天気は悪く、厚い雲が空を覆っていた。
「今日は冷えるわねぇ」
 予約していたケーキを受け取りに、お母さんは女の子と共に道を歩いていた。
 突然、女の子が声を上げた。
「キラキラ!」
「え?」
 女の子がお母さんに向かって手を差し出す。
 手袋をはめたその手の平の上に、小さな雪の結晶が乗っていた。
「……雪?」
 見上げると、雪が舞い出していた。
 今まで南の方に住んでいた女の子が雪を見るのは、これが初めてだった。
「キラキラ! わぁー」
「キラキラって……」
「サンタさん、ありがとう!」 
 女の子が喜ぶ顔を見て、お母さんもサンタクロースに感謝した。


『手のひらの贈り物』

12/19/2025, 10:39:53 PM