かたいなか

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私、永遠の後輩こと高葉井は、
一昨年、観光目的で先輩の帰省に同行した。
先輩は雪国出身で、一昨年の帰省当時、2月の終わり頃はまだ雪が残ってて、
そして、一番乗りの、本当の最初の、
どこよりも日当たりと雪解けの条件が良い場所の、
斜面にフクジュソウが咲いてた。

『4月直前にならなければクロッカスも咲かない』
雪国出身の先輩は、故郷の寒さをそう説明した。
3月はまだ、ほとんどの花が雪の中だけど、
ギリギリ雪解けの状況や気温の推移が良いと、
2月の終わり、3月の最初の頃、花が咲くらしい。

先輩の故郷で見たフクジュソウを、私はスマホで複数枚撮って、フォルダに残してる。
パンプスじゃきっと登りづらいだろう斜面、
太陽の光をナゾ技術で反射する花びら、
その反射で花びらの中にできる光輪。
当時の私は、「私はきっと、誰よりも早く先輩の故郷の春を知ったんだ」と思った。

先輩が言うには
先輩の故郷は「春」の前に
「冬の終わり」ないし「晩冬」あるいは「早春」
っていう短い季節があるらしい。

よくわかんない(と都民が申しております)

「……ってハナシを、アーちゃんと師匠にしたの」
「アーちゃんはアテビさんとして、師匠?」
「師匠は師匠」
「はぁ」
「そしたらアーちゃんも師匠も、先輩の故郷に行ってみたいらしいの」
「うん。そうか」

「先輩今年はいつ帰省する?」
「何故毎度毎度私の帰省に同行するカタチでだな」

「だって先輩の故郷を誰よりも知ってるのって
やっぱり先輩自身じゃん」
「は……」

…––2月も後半になった。
だいぶ暖かくなって、来週には最高20℃が予想されてる東京の、私の職場の図書館の、
昼休憩に、私は先輩に帰省の予定を聞いた。

先輩は、2月の終わりか3月の最初の頃に、ここ数年は帰省してるらしい。
一昨年の帰省に、私も同行した。
ドチャクソに寒かったけど、先輩の実家のごはんがすごく美味しかったし、
なにより、先輩の故郷で見た一番最初のフクジュソウが、すごくキレイだった。

私こと高葉井の後輩、アテビのアーちゃんは
聞く所によると黄色い花が好きらしい。

で、
月曜は休館日、図書館の仕事がお休みだったから、
個チャでメッセして、喫茶店で会って、
一緒にヌン活しながら先輩の帰省の話をしたら、
『ぜひ!私も行きたい!』
アーちゃんは目を、すごく輝かせて、
『冬の終わりの黄色い花、キレイだろうなぁ』
それはそれはもう、嬉しそうにしてた。

それで
まさかの偶然も偶然、
私とアーちゃんがヌン活してたその近くの席に
私のメイク、特にアイメイクの師匠と
師匠のご友人さんが
ちょうど、何かの仕事の寄り道で来てたらしくて。
『なぁにー?冬の終わりの花〜?』

「で、その師匠さんとアテビさんに、私の帰省の話を共有したワケか」
「師匠、同行させてくれるなら全員分の旅費出すって言ってたよ」
「全員分?」
「師匠、間違いなく誰よりもお金もちなの」
「なる……ほど?」

「で、先輩の帰省、いつ?」
「あのな高葉井??」

はーい、そろそろ昼休憩終了よぉ。仕事なさーい。
上司の多古副館長が入ってきて、私と先輩の肩をポンポンして、先輩との会話は一旦中断。
後輩のアーちゃんも一緒に入ってきたから、
先輩に言っておいたよ、
ってアイコンタクトしといた。

「あのな高葉井、アテビさん、まだ同行について何も決めたワケじゃないからな?」
「ありがとうございます藤森さん、高葉井さん」
「だから、あのな??」

ひとまず、あとの議論は仕事の後で、
ということにはなったけど、アーちゃんはそれはそれは、誰よりも、嬉しそうな顔してた。

2/17/2026, 7:03:55 AM