かたいなか

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12/28/2025, 8:43:42 AM

日本の伝統菓子・おかきは、鏡餅を「『欠き』割って」作られたものだそうです。
と、いうネット情報は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家は、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔一家の自宅にして、参拝者用の宿坊も兼ねていました。

何百年も前、その地に現れた花の怨霊を、
3本尻尾の金の雄狐と、2本尻尾の銀の雌狐の夫婦が、やっつけて鎮めて社を築いたのが由緒。
今も稲荷狐の家族は人の世に紛れ込んで、
あんなこと、こんなこと、コヤコヤこんこん、
見守っておったのでした。

さて。
狐家族の末っ子が、尻尾をぶんぶんビタンビタン、
宿坊利用者が持ってきてくれた手毬にジャンプしてかみついて、ケリケリ、遊んでおりますと、
当日予約で宿坊に来た2人の野郎が、予定時刻より1時間ほど遅れて、チェックインに来まして、
野郎の冷えきった様子を見た狐のおばあちゃんが、お母さん狐に言いました。

「風呂の準備をしておやり」
「グレード、どうなさいます?」
「ヒノキ風呂が良い。ふんだくっちまいな」
「はい。そのように」

タバコのオッサンと、コーヒーのおじちゃんだ。
子狐は耳も、鼻も良いので、すぐ分かりました。
玄関で温かいお茶を貰っておった野郎2人は、子狐のそこそこお気に入り。
イチバンのお気に入りは別にいますが、
それでも、子狐の遊びに付き合ってくれる、良い人間には違いありませんでした。

ちなみにその野郎2名よりお気に入りなのは
子狐に手毬を持ってきてくれたお嬢さん。
子狐同様、美味しいものが大好きなお嬢さんです。
「なんかね〜」
お嬢さんが子狐に、情報提供です。
「コンちゃんの言う『タバコのオッサン』が、コーヒーのおじちゃんに叱られたらしいよぉ」

なんで、叱られて体が冷えちゃったんだろう。
子狐はさっぱり分かりませんでしたが、
お嬢さんが言うにはなんでも、
タバコッサンがどこかのスキー場からスピード超過のボブスレーがどうので、ガードレールをガン。
射出されてったとか何とか、かんとか。

まぁ細かいことは気にしません。
それは、前回投稿分のおはなしです。
今回は今回のお題です。

「ほい!ちょっと早いが、鏡餅」
お嬢さんと一緒に宿坊に泊まっておった親友さんが、コンコン子狐とお嬢さんのために、
丸いおまんじゅうの生地にバニラアイスやチョコアイス、オレンジアイスなんかを包んで、
「凍てつく鏡」ならぬ、「凍てつく鏡餅」を、作って持ってきたのでした。

つまり雪見だ●ふ<です以下略。
2個重ねて上に小さなちいさな、ポンカンくらいの小ささのミカンをひとつ。
これで、「凍てつく鏡餅」です。

玄関ではまだまだ、タバコッサンとコーヒじちゃんが、何やら話し込んでいます。
「俺は悪いことはしていない」
とか、
「もう一度根性叩き直してもらいましょうか部長」
とか、ごにょごにょ、聞こえています。

細かいことは気にしません。
きっと今回のおはなしの裏側の、なにか別のおはなしなのです。 たぶん。

「つめたい!つめたい!おいしい!」
がぶっ!
コンコン子狐、さっそく凍てつく鏡餅に噛みついて、大福の生地とバニラアイスを楽しみます。
「ほら、こっちゃ来い。コタツに入れ」
お嬢さんの親友さんが、ちょいちょい。自前のコタツに子狐を招き入れます。

子狐もお嬢さんも親友さんも、野郎のことは気にせんで、スイート鏡餅をちゃむちゃむ、もぐもぐ。
お嬢さんが淹れた温かいお茶と一緒に、
温かい時間を過ごしましたとさ。

12/27/2025, 9:58:53 AM

私、永遠の後輩こと高葉井が勤務してる図書館は、
私立図書館なので、年末年始なんて関係ない。

ひとまず12月29日は月曜だから休館として、
30日も31日も、正月のサンガニチも開館する。
とはいえ、館長も副館長も、鬼ではないから、
年末年始にシフトを置く職員のその日の日給に関しては、祝日勤務手当で増やしてくれるらしい。

特別手当の情報を提供してくれたツウキさん、付烏月さんはガッツリ5日休むとのこと。
詳しい理由は教えてもらえなかったけど、
「本業」の方で、何かあったらしい。

私も付烏月さんの本業に転職したい
(給料の増減は知らない)

「後輩ちゃんが大好きなルー部長は、ツバメとスノーアクティビティの長期講習だよん」
ポリポリポリ。
自作らしいハニーローストピーナッツをつまみながら、付烏月さんが言った。

「なんかね、先日、詳しいことは知らないけど、
長野の山でソリスレーして、
速度超過で爆走からの暴走して、
最終的にガードレール突き破ったらしいよ」

「がーどれーる」
「うんガードレール」

「ソリスレーってなに」
「ルーブチョ、スキーもスノボもできないの」
「スキーもスノボもできない」
「それでソリに乗ったらしいんだけど
めっちゃハマっちゃったらしくて」
「めっちゃハマった」

「結果として山から滑走してって
凍結した山道まで落ちてっちゃって
ガードレールを突き破って
雪明かりの夜にバーンて射出されたらしいよ」

「しゃしゅつ」
「バーン」
「しゃしゅつ……」

「後輩ちゃんは、なんかこう、予定あるの?」
ルー部長という私の推しが、
雪明かりの夜に、月をバックに、ソリで射出。
なにそれって情報を付烏月さんから聞いて、
脳内で雪明かりとソリと推し部長のショート動画を生成して再生してると、
付烏月さんが、私に聞いてきた。

「えっ。 普通にシフト」
推しが射出。 推しが雪明かりの夜に射出。
もはやそのパワーワードがパワーワードで、
なんにも話せないし、頭がついてかない。
「うん普通にシフト」
推しが雪明かりの夜に山でソリしてガードレール突き破って月明かりをバックに射出。
もう分かんない。
そもそも推しがスキーもスノボもできないってのが意外……いやそうでもない……でもない?
もう分かんない。

「あら」
目が点になってる私の近くで、
今度は多古副館長が、スマホ見て呟いた。
「ちょっとアンタたち、」
その副館長が言うには、

「その『ルー部長』の射出映像、
手に入ったけど、見る?」

12/26/2025, 4:05:12 AM

ガチャに課金して祈りを捧げて、
回してすり抜けてそもそも最高レアが無くて、
更には人権対象を複数回、完凸まで。
なにやらタマシイジェムが濁ってにごってナゲキシードになりそうな状況を、
何度も、なんども、繰り返す物書きです。

祈りなんて届かぬのです(八つ当たり)
そんなもの、犬にでも食わせりゃ良いのです( )
なんて夢のないハナシは置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

最近最近の都内某所、某私立図書館の中のイチバン大きな閲覧室では、
大きなおおきな、クリスマスツリーの片付け作業が、来館者が帰った夜の間に為されていました。

「ねぇ先輩!なんで図書館って!
こんな業者にやってもらった方が安全で早い作業を自分たちでやらなきゃいけないの!」
「そういうモノだからだ」

「だから!なんで!なんでッ!
図書館ってそういうモノなのって!」
「枝渡すぞ。ちゃんと受け取ってくれ」
「んんんんんああああああもう」

組み立て式のモミの木のオブジェには、
キラキラ光るLEDのテープライト、まんまる小さい玉のオブジェ、本物の靴下等々と一緒に、
今回のお題回収として、
『彼女ほしい』
『借金帳消し』
『健康ください』
『推し当たれ』
『活力百倍鍛錬第一』
様々な欲望、もとい祈りが、
星の形をした紙に書かれて、吊るされています。

「来館者に書いてもらったこの紙、」
「近くの例の稲荷神社でお焚き上げだ」
「普通に捨てるんじゃないんだ」
「らしいな」

達筆、文豪、ド直球にイラスト、等々。
図書館に来た複数の誰かの祈りを捧げて、25日まで展示されておったモミの木のオブジェです。
世界平和に打倒管理局、続編安泰云々。
誰のものとも知れない祈りを捧げて、25日には撤去される運命のモミの木のオブジェです。

祈り、いのり、イノリ。
捧げられた星の記入用紙は全部で百枚と少し。
ひとつの箱に入れられて、年末年始の願掛け用紙と一緒に、後日稲荷神社に奉納。
然るべき手順を踏んで、お焚き上げの予定です。

「先輩なにか書いた?」
「お前はどうなんだ」
「いっぱい書いた」
「はぁ」

「アレと、ソレと、ヤンヤンとニャンニャン、
来年は是非ぜひツー様とルー部長の」
「最後の枝だ。受け取ってくれ」
「はいはい」

クリスマスパーティーの準備できたよん。
遠くから別の職員が、閲覧室に向かって、大きなおおきな声をかけます。
クリスマス展示の撤去作業終了後、その私立図書館に勤務しておる職員で、
もちろん、希望者オンリーですが、クリスマスパーティーをする段取りであったのです
が、
何やらコンコンこやこや、稲荷子狐の声がするのは何故でしょうかハイ気にしない。

「よし」
来館者の祈りを捧げて飾られたモミの木のオブジェの、片付け作業もそろそろ終了。
「あとは、幹を片付ければ」
数日と経たないうちに、年末年始が始まります。
私立図書館は私立なので、年末年始も開館中。
神社っぽい展示とオブジェと、それから新しい「祈りを捧げる対象」とで、来館者を迎えるのです。

「ツルカプ万歳」
「なんだって?」
「なんでもないでーす」

クリスマスの欲望もとい、祈りを飾り続けた、図書館内のオブジェのおはなしでした。
おしまい、おしまい。

12/25/2025, 6:55:28 AM

どこかの100均のティーキャンドルが、異常燃焼を起こして酷く大きく燃え盛って、
吹いても消えなかったので、テンパって水をぶっかけて、前髪がアフロになりかけた。
遠い日のぬくもりを教訓にしたい物書きです。
キッチンの油の初期消火も、キャンドルの火の消火にも、窒息消火。酸素を奪って消しましょう。

と、いう遠い日の実体験は置いといて、
今回のおはなしのはじまり、はじまり。

最近最近、都内某所にある某杉林の中の、
山小屋というか林小屋というか、ともかくそこで、
お題回収役の男性が、パチ、ぱきん、
レトロで使い古された、しかしよくよく手入れの行き届いた薪ストーブの、火の世話をしていました。

「ここから真北1キロに、領事館があるんです」
お題回収役のその男は、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織の、そこそこエリートな局員。
「ツバメ」という名前を貸与されています。
「いわゆるコロナ禍が始まる1〜2年前、
私達法務部が、不明な建造物を見つけましてね。
その初動調査に出たのが、私でした」

管理局の言う「不明な建造物」とはつまり、
この世界の外の技術・魔法・アイテム等々が使用された、異世界の建築物。
ツバメたち世界線管理局の法務部は「その世界に存在してはならないもの」を調査して、監視して、
そして、その世界がその世界で在り続けられるように、他の世界によって侵略されないように、
為すべきことを、為すのでした。

で、それと今回のお題の「遠い日のぬくもり」の
どこがどういう関係で結びつくかといいますと。

「奥多摩地域で氷点下を記録した夜でした」
パチン。 ストーブに入る空気を調整しながら、
ツバメが遠い日のぬくもりについて言いました。
「東京であそこまで下がるなど、想像しなかった私は、防寒という防寒の準備が不十分でした」

完全に油断していたんです。
ツバメはそう続けて、薪ストーブの上で熱しておった金属ケトルを下ろして、タピタピタピ。
中挽きのコーヒーの上に湯を落としました。

「完全に体が冷え切って、意識が遠のいて、
気がつけば、この小屋の中、薪ストーブの前。
チーズとハムを挟んだパンと、それから、温かいコーヒーが準備されていました。

小屋から誰かが出ていく気配がして、
礼を言おうと追っていって、しかし間に合わず、
それでもその人の影だけは……美しい女性の影だけは、間違いなく、見たんです」

恋ではありませんよ。
何かこう、奇跡に会ったというか、そんな。
神秘体験のそれですよね。
丁寧に蒸らして淹れたコーヒーを味見して、
ツバメは満足そうに、頷きます。
上手に入ったのでしょう。

「それ以来、つい最近まで、コーヒーといえばその神秘体験でした。 つい最近までね。」
ぎゃあん! ぎゃあん!
大人のホンドギツネが小屋の近くで吠えています。
パチ、ぱち、 ぱきん。
大きめの杉の薪がストーブの中で音をたてます。

「安心してください。ちゃんとオチが有ります」
コーヒーと薪ストーブの、遠い日のぬくもりを、
ツバメはこうして締めくくりました。

「女性だと思ってたその神秘、
ウチの管理局の法務部長だったんです。
男です。オネェだったんです。っていう。
……恋じゃなかったのは事実ですけど、ウチの上司の上司を、一時的に女神かなんかと……ねぇ」

もう、なんなんでしょね。うん。
ツバメはため息ひとつ吐いて、遠いその日に用意されていたものと同じ味のコーヒーを、
ひとくち、飲みましたとさ。

12/24/2025, 3:27:42 AM

前回投稿分から続くおはなし。
ノラばあちゃんにお茶会のお呼ばれをされて、
昔管理局でキツツキの名前を貸与されておった、例の稲荷神社のおばーば様が、
孫が作ったお餅を手土産に、ウッキウキで、
管理局の経理部に降臨した
の、ですが。

「あらあらあら、キーちゃん!
来てくれたのね、嬉しいわ!」

ちゅどどどど、ズドドドドド!!
コタツで編み物をしておったノラばあちゃん、キツツキばあちゃんがコタツに近づいてきてすぐに、
それこそ狐や猫が姉妹兄妹と本気でじゃれ合う程度の感覚で、すなわち「至極自然な感覚で」、
魔法だの秘術だのの撃ち合いを始めたのです!

そういえばノラばあちゃんとキツツキさん、
昔々はバディーを組んでて、
それはそれは、ヤンチャしてたって聞いたなぁ。
先にお茶会のコタツに来ておったお嬢さん・ドワーフホトが、クピクピ。
高級台湾茶を飲みつつ、
ふたりの「じゃれ合い」をボーっと見ています。

カタカタ、ことん。
お茶会会場のコタツの上で、
揺れるキャンドルが右に左に、傾きました。

何がヤバいって
日頃は編み物などしてるノラばあちゃんと
もう管理局を退局して●年のキツツキばあちゃんが
双方ドチャクソ楽しそうに
ちゅどどどど、ズドドドドド!!
管理局収蔵のチートアイテムなり
コンコンふぉっくす稲荷秘術なりを
ブッパしておることなのです。

おうおうおう。
ノラばぁの2割の本気モードだ。
久しぶりに見たぜ。
ノラばあちゃんの同僚にして、ドワーフホトお嬢さんの親友・スフィンクスが、ズズーッ。
高級台湾茶を飲みつつ、
ふたりの「じゃれ合い」をボーっと見ています。

カタタタ、たたん。
お茶会会場のコタツの上で、
揺れるキャンドルが前に後ろに、移動しました。

「アンタも元気そうでなによりだよ、ノラ、
でも見ない間にちょいと老けたねぇ」
どどどどどん!ちゅどどどどん!

「そりゃそうよ、キーちゃんのような、永くながく生きられる種族じゃないもの、
そんな無茶は言わないものよ、キーちゃん」
ドタタタタタ!タタダダダダン!

「ああ何年前だろう、あの頃が懐かしいよ」
「私も懐かしいわキーちゃん。本当に、遠慮しないで、たまには遊びに来てね」
「それこそ無茶言うんじゃないよ」
ズダダダダ!どだだだだ!
どんどんどんどんどん!チュピーン!

管理局収蔵のチートアイテムで魔砲ぶっぱのノラばあちゃんと、
強大なコンコン稲荷狐の稲荷秘術を一斉掃射のキツツキばあちゃん。
どちらも楽しそうに談笑して、楽しくじゃれて、
でも、ふたりの外は阿鼻叫喚。
カタカタたたん、揺れるキャンドルが振動に合わせて、前後左右に滑るのでした。

揺れる、キャンドルの火ではなく、
揺れる「キャンドル」のおはなしでした。
その後、ひとしきり体を動かしたばあちゃんズ2名は、とっても良い笑顔で再会の抱擁をして、
ドチャクソ幸福に、お茶会を楽しみましたとさ。
めでたし、めでたし。

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