かたいなか

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前回投稿分から続くおはなし。
今日も平和な「ここ」ではないどこか、別の世界の職場。世界線管理局です。

前回投稿分の妙ちくりんな金銀ワサビ女性によって、虚ろ目だかぐるぐる目だかにノビてしまった図書館職員・藤森が、
ガラガラガラ、がーがーがー。
ストレッチャーにのせられて、ゆっくり、移動しておりました。

「はーい、患者さん通りまーす」
「かんじゃさん!かんじゃさん!」

ストレッチャーを押しておるのは、被害に遭った職員の友人で、管理局の法務部職員。
ビジネスネームをカラス、または付烏月(つうき)といいました。

なおノビてる藤森の胸の上で、ファシファシ、しゅひしゅひ、シーツなどに穴掘りしておる子狐は、
ただの稲荷子狐でして、特に意味はありません。
単純に藤森のバタンキュにノビてるのを、面白がっておるだけなのです。
特にストレッチャーなる乗り物が楽しい様子で。

「患者さん通りまーす。道あけてくださーい」
「くださーい!」

さて。
前回投稿分の妙ちくりんワサビにやられた藤森、
その妙ちくりんが藤森の体にも、魂にも、悪い影響を与えていないか、調べる必要がありますので、
非科学的、神秘的、魔法じみた体調不良にも対応できる世界線管理局の医療施設へ、
すなわち通称「医療棟」へ搬送されます。

「なに。世界線管理局法務部のシジュウカラが、
東京の図書館で妙ちくりんなワサビを使って、その結果としてこの患者が気絶した?」
はぁ、なるほど?
ストレッチャーが診察室のひとつに到着しますと、
医療棟に勤務する医務官、ヤマカガシが待っておりまして、藤森の目を観察します。

「で、その『妙ちくりんなワサビ』というのは?」
「なんか、『お気に入りの金剛ワサビと銀剛ワサビ』とかいうヤツらしくて。
問い詰めたら色々と情報出してくれたけど」

ほら。コレ。 ふむ。どれどれ。
カラスが渡した情報の束の、1枚目と2枚目に目を通したヤマカガシは、
少し考え事をして、助手さんにそれぞれ指示を出して、うん、と小さく頷きました。

「例のフローリングの12時間暴露を処方する」
ヤマカガシは言いました。
「レプリカほどの強度は不要だ。ひとつ下のレベルの、イミテーションで十分だろう。
要するに、寝れば勝手に治るハナシだ」

フローリングって、何でしょう?
子狐はヤマカガシの言っていることの、意味がちっとも分かりませんでしたが、
カラスは全部心得たようで、助手さんの誘導に従って、ストレッチャーをガラガラガラ。
子狐と一緒に、ゆっくり押してゆきます。

「ふろーりんぐ」
「そうだよん。フローリング。
数少ない、オリジナルが管理局に収蔵されてないチートアイテムのうちの1個だ」
「フローリング?」
「誰でもたちまち寝かしつけてしまうから、
不眠症とか、睡眠不足とか、そういうのにだいたい処方されるよん」

なんだそれ、なんだそれ?
頭にハテナマークを浮かべる子狐と、完全にノビて何も言わない藤森をのせて、
ガラガラガラ、がーがーがー。ストレッチャーは移動してゆきます。

「12時間お昼寝、いってらっしゃーい」
途中で待っている助手さんにストレッチャーを任せて、カラスは帰ります。
「半日ネンネだから、
今日にさよなら、しておいでー」

なんだそれ、なんだそれ?
今日にさよならって、なんだそれ?
子狐はやっぱり、ちんぷんかんぷん。
気がつけば眠気が降りてきて、気がつけば気持ちよく昼寝をしておって、
最終的に、心も体も魂もスッキリ。
藤森は藤森で、1日分の記憶がスッポリ抜け落ちておったとさ。

2/19/2026, 3:06:53 AM