初心者太郎

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—予知夢—

夢の中で未来を見ることができる友人がいる。内容はまちまちだが、夢の中で見たことが必ず現実になる素晴らしい力だ。

ある時はテストに出る問題を、ある時は天気が急変する未来を、ある時は事故が起きる場所を。

俺はそんな彼の能力に助けられた。
五年程前、その友人からおもしろい夢を聞いた。

『僕たちが立ち上げた会社が、数年後に大企業になる夢を見た』と。

俺は内定が決まっていた会社を蹴り、急いで準備に取り掛かった。
数年後、彼の言った通り、俺たちの会社は世界中が注目する企業にまで成長した。


「今日はどんな夢を見たんだ?」

通勤中、気になって電話で友人に聞いてみた。いい夢だったらいいな、と心の中で思った。

『今日はおもしろい夢だったなぁ』彼の少し震える声が聞こえる。
「へぇ、それは早く聞きたい」

暗く細い道に差し掛かった。朝早いせいか、人はいない。

突然、背後から走る足音が聞こえてきた。
ゆっくり振り返ると、ナイフを持った知らない男が近づいてきていた。

『君は最近ギャンブルを始めたんだね』友人は続ける。『会社の金を横領してやっているそうじゃないか』

男との距離はだんだんと近づき、そしてついに、持っているナイフで腹を突き刺された。
身体が熱い。

『それを知った僕は腹が立って、君を殺しちゃう夢を見たんだ』
「こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」

今出せる精一杯の声で、彼に言った。

『大丈夫さ。だって夢では大丈夫だったからね』

あぁ、本当に素晴らしい力だな、と思いながら俺の意識は暗闇の中に沈んだ。

『今までありがとう』友人は最期にそう言った。

お題:君が見た夢

12/17/2025, 1:23:37 AM