阿呆鳥

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【お気に入り】

 大好きな映画がある。DVDを大事に大事に保管して、何度も見返すぐらいに大好きなコメディ映画が。
 好きな俳優が出ている訳じゃない。世界観の設定も特別好きなものじゃない。それでも何かが心の奥に刺さっていた。

 ある日、友人に誘われて映画館にやってきた。特に見たいものもなかったのだが、一人で行きたくないという友人に引っ張られて。
 そんな友人は、学園恋愛モノが見たいらしい。私は恋愛モノが苦手だ。どうしても見てる途中でくすぐったくなってしまう。甘い雰囲気の流れる告白シーンは耳を塞ぐし、キスシーンには顔を逸らす。自分に恋愛経験がないからか、どうも恥ずかしくて見ていられないのだ。
 しかし、お金を払ってしまった手前、見ないわけにはいかない。帰りたい気持ちを抑え、チュロス片手に大人しく席に座った。

 映画が終わった時、私の気分は最高だった。さっばりとした雰囲気で全てが終わり、甘いシーンはラストの数分だけだったのだ。恥ずかしがらずに全てを見ることができて、嬉しくてテンションが上がっていた。隣にいる友人は顔を顰めて「微妙だった」などと呟いているが、私はそれを無視して感想をつらつらと喋り始めた。

「近いうちにまた見に来ようかな。ハマったわこれ」

 友人の苦い顔を無視し、スキップしながら帰り道を歩く。お気に入りとなったシーンを思い出し、鼻歌を歌いながら。 

2/18/2026, 1:36:48 AM