田中クン

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よく笑う女の子だと思った。集団のなかで誰かが喋るたび君は笑った。それが何だか痛々しくて、笑っていない君を見てみたいと思った。

でも僕は君の笑顔が嫌いじゃなかった。透き通った声も、眩しそうに微笑む目元も、口元からのぞく八重歯も、素敵だと思った。僕は君が笑うたび、どうしようもなく泣きたくなる。

夜、君のことを考えると、嬉しくなることに気がついた。君はなんの食べ物が好きなんだろう、どんな音楽を聴くのだろう、今何しているのだろう。

昔の君を見たいと思った。なにが好きだったのか、ランドセルは何色だったのだったのか。どんな人を好きになったのか。

君は僕みたいな陰気で、捻くれた人間じゃなくて、真っすぐで優しい人間だ。親の愛情や友情を、心から信じて、誰かに優しくできる人間だ。僕が君を考えてしまうのも、そんな君の純真さを信仰しているからなのだと思う。僕は君を美化しすぎているのかもしれない。でもいつか君に伝えたいと思う。

君と言葉を交わす度、君のことを知る度、どうしようもなく悲しくなった。君の言葉をもっと聞きたいと思った。

5月生まれのめいちゃんという猫を飼っている君、吹奏楽部で打楽器を演奏する君、ねぎとろが好きで、いくつもサークルを掛け持ってる君。ドラクエをやっていて、意外とロックが好きな君。交わした言葉が宝石みたいで、ノートに書いてそっとしまった。そんな君を知るたび、ため息が溢れるみたいに、言葉が溢れそうになった。

もっと言葉を交わしてみたい、ただ君を見ていたい。ただそれだけなんだ。ただ、幸せでいてほしいと思うだけなんだ。

彼女の心の片隅に僕がいたならいいなと思う

12/18/2025, 2:12:34 PM