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 冬の寒い日には、あたたかい部屋で本を読むのが好きだ。図書館もいい。子どもの時は、図書館の大きなストーブの近くに行って、夢中になって本を読んだ。じんわりとしたぬくもりと、本の独特の匂いに包まれていた。

 久しぶりに、大きな図書館に行った。あの独特の本の匂いがする。大きな机の一角に座って、本を読む。図書館でしか読めないような大きな辞典なんかも眺めてみる。

 たくさん人はいるけれど、静かだ。まったくの無音ではない。そこにいる人の言葉にはならない思考に取り囲まれている。そういう空気も心地よかった。

 ふと、外を見ると雪が舞っていた。うっすら積もり始めている。雪は、せわしなく動くのに静かだ。音を吸収する気がする。外からもすっぽりと静寂に包まれて、ページをめくる。


「雪の静寂」

12/18/2025, 8:00:16 AM