—思い出の場所—
子供の頃、私は科学館が大好きだった。
科学館の中にはプラネタリウムがある。それは何度見ても綺麗で楽しくて、休みの度に母にお願いして連れて行ってもらった。
「何回も見て、飽きないの?」
母の言葉に、私は首をブンブン横に振った。きっと母は飽きていただろうけれど、私に付き合ってくれた。
母と手を繋いで、何度も通った科学館の入り口。久しぶりに見ると、改装されて新しくなっていた。
「懐かしいわねぇ」母が言った。
「本当だね」
あれから五十年近くが経った。
今度は、私が母の行きたい所に連れていく番だ。
あの頃と同じように手を繋いで入り口を通った。手のぬくもりは昔と変わらない。
お題:遠い日のぬくもり
12/25/2025, 1:34:53 AM