—リスタート—
俺はたった今、無職になった。
十年間勤めた会社が、倒産したのだ。
「ごめん」
その夜、俺は妻と娘に頭を下げた。
まだ三歳の娘がいるというのに、無職になるなんて情けない話だ。
「ぱぱ、むしょく……?」
「パパのお仕事がなくなっちゃったのよ」
「しごとがない……」
妻は平然と言う。
「でも大丈夫よ。仕事はどこかにきっとあるし、パパがこれまで頑張ってくれたおかげで貯金もあるから。——むしろ、少し休みがとれて良かったじゃない」
なんて笑いながら言った。
そんな妻の心の強さに、俺は支えられる。
「ありがとう」
もう一度、俺は頭を下げた。
見捨てられなくて良かったと、心から思う。
彼女の優しさに、思わず涙が溢れてきた。
「ぱぱ、しごとあるよ!」
ふいに娘が叫んだ。
「なあに。どんなお仕事があるの?」と妻が隣の娘に訊く。
「あしたから、パパはメイとあそぶの!」
二人でふっと笑ってしまった。
「確かにそうね。子育ても立派なお仕事だもんね」
「わかった。明日は遊びに行こう」
「じゃあお弁当作って、ピクニックでもしよっか」
「ぴくにっく、したい……!」
暗くなると思っていた部屋の雰囲気は、いつの間にか明るいものになっていた。
無職になってしまった初日。
俺のスタートは、悪くない滑り出しだった。
お題:0からの
2/22/2026, 6:07:39 AM