藤月

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【tiny love】

 放課後、聞き慣れたチャイムが校内に鳴り響く。
 いつの間にか教室には自分たちしかいない。
 友人と過ごすのは楽しくて、毎回時間を忘れてしまう。
 このチャイムを合図に教師がライト片手に見回りを始める。見回りは持ち回りのようだが、厄介な教師に当たると面倒くさい。
 なので見つかる前にさっさと帰るのが二人の日常だった。
 昇降口の扉を開けると同時に、顔全体に氷を浴びたような感覚。肌は最低限しか出していないのに、それだけでぞわりと全身の肌が粟立った。

 「なあ、コンビニ。」

 あまりの寒さに単語しか出なかったが、友人はそれだ!という顔をしてくれた。

 高校から一番近いコンビニまで、歩いて大体十五分くらい。意外と距離があるが、コンビニに着くまでの間すら話題が尽きないお陰で一瞬で着いたかと思うくらいだ。
 到着した二人が真っ先に向かったのはレジ横の中華まんコーナーだった。
 優柔不断な友人はどれにしようかと、うんうん悩んでいたが突然振り返って

 「半分こしようぜ!」

 なんて言ってきた。
 仕方ない、と受け入れる俺は甘いだろうか。
 どれで悩んでいるのか聞くと

 「肉まんと季節限定のカレーまん!」

 と、それはもう元気よく答えるので吹き出しそうだった。
 了承して各々の会計を済ませる。
 店内飲食スペースがないコンビニだったから外で食べる羽目になったが、これはこれで季節感を味わえる。
 
 外に出て、自分の持つ肉まんをむしりと割った。
 …しまった。若干失敗して大きさが偏った。
 こんなところで不器用さを発揮しなくていいのに、と心の中で己に毒づく。まあ相手はこいつだし良いかと迷うことなく大きい方を友人に差し出す。
 すると、向こうも同じタイミングでこちらに肉まんを突きつけた。
 受け取ろうとして、気がついた。
 こいつが差し出した半分も、俺と同じくらいの大きさだと。

10/29/2025, 2:19:27 PM