「lookin’ for love 今建ちなら〜ぶ、街の中で口ずさむ」
正気のない声が、私の口から冷たい空気の中を振動して暗い海へ逃げ出していく。
冷たい風が私のコートを撫でて、船上を吹き抜けていった。
私の黒い目に反射している故郷の光は、寡黙なデッキとは打って変わってチラチラと鮮やかな旋律を奏でている。
久しぶりに口を開いてみて、案外自分の唇が乾き切っていたことに気づいた。しかし構わず次のフレーズが私の口から滑り落ちていく。
「Ticket to ride 呆れるくらい君へのメロディー」
思えば、私は自分の街からあまり出たことがなかった。
街の外に友達と呼べる仲間もいないし、長い間街の外に宿泊したこともなかった。
キラキラと輝く一つ一つの光すべてに知性と感情が詰められていて、それがその人らの人生なんだと思うと自分の人生はあまり大したものじゃなく思えた。
私は今まで感じた怒りや悲しみ一つひとつに、蓋をかけて火を吹き消していく。
「遠い記憶の中にだけ 君の姿探しても」
白い息が私の周りの空気に癒着して溶けていった。
光の数を数えようと北の方から数え始めたが、視界にモヤが掛かったようで光が一つに見えた。
「もう戻らない でも忘れない 愛しい微笑み」
また、冷たい風が私の頬を撫でた。ほんの少しだけ暖かくなった空気は故郷の誰かがまた触れるのだろう。
そして、今触れた冷え切った空気も、今から行く街の誰かが触れたものなのだ。
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三年弱のアカウント消えました。
もともと「中学生」っていうアカウントでたまに投稿していたんですけど、ログインするのを失念していて引き継ぎができませんでした( ; ; )
12/5/2025, 10:40:46 AM