雛朶

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遠い日のぬくもり

私は努力ができない。続かない。
才能があるかと言われたらそうでもない。
努力しようと試みてもその場の空気に飲み込まれてしまう。親の機嫌をとって生きてきた子だったから。
だから出来なかった。周りに真面目な子も沢山いたし、一緒に勉強もしていた。でも友達の一つ一つの行動、言葉が気になって、嫌われてないかな、怒ってるのかなとか考えてたら集中できなくて、やめた。
そんな事を続けていると、私は馬鹿でおちゃらけた子になってしまっていた。
私は気づいたんだ。このおちゃらけた私で居るとみんなが笑ってくれて、私に優しくなる。
「馬鹿」「こんなこともできないの?笑」
なんて言われてもこのキャラだとみんなが笑ってくれる
そんな私を演じていたら努力と才能も見失っていた。
前に戻ろうと思えば戻れた。でも今の環境の居心地がいいから、もっとこのままで居たいと思ったから。
人間がだめになるのなんて早いから。

「努力も何もしないあんたが私に才能だねなんて言わないでよ。私は努力したんだよ」と言われた。
軽い褒めだったのに。
「じゃあなに、努力してて偉いねとでも言えば良かったわけ?私だって努力しようとしたよ。でも突っかかって来たのあんた達でしょ。あんた達のせいなのに私にいちいち言わないでよ。あんた達はさ、私に馬鹿とか言ってきたけどあんた達の方が馬鹿でガキじゃん。褒めたのに怒るとか心狭」
言ってしまった。
私が後悔でいっぱいになって走って家に帰った。
家に帰ると孤独な空間が広がっていて、唯一素で入れて、楽なはずの家が居心地の悪い場所になった。
私は生きる努力を精一杯したよ。
君たちのおもちゃでいるために。

ギチギチと音が物音一つしない部屋で縄を首にかけて、
椅子で身長を盛って首に縄がかかった瞬間に生きる努力が散った。首に掛かった縄はギチギチと音を鳴らして、力なく吊るされている私をより際立たせた。

12/24/2025, 6:16:56 PM