『星になる』
最近、光が痛い。
街灯の下を通るたび、胸の奥を針で刺されるみたいに息が詰まる。スマホの画面を開くだけで目を細めてしまう。きっと疲れているだけだと自分に言い聞かせてきた。
名前を呼ばれなくなったのは、いつからだっただろう。
会話は私を避けるみたいに流れていって、気づけば相槌を打つ必要すらなくなっていた。誰かが笑うたび、私は少しずつ、薄くなる。そんな感覚だけが、やけに確かだった。
夜、洗面所の鏡を覗くと、瞳の奥に小さな光が浮かんでいた。
星みたいだ…
なんて思う自分…笑えなくなる。
星は綺麗だ。でも、触れられない。
ああ、そうか。
私はもう、星になる準備をしている。
夜風が冷たい。
それなのに、身体の感覚はもうほとんど残っていなかった。指先から順番に、私じゃないものに変わっていく。光だ。重さのない、名前を持たないもの。
見上げた空は、思っていたよりずっと高かった。
星は綺麗だ。誰にも邪魔されず、誰にも触れられず、ただそこにあるだけで許されている。
――いいな
と思ってしまった。
そのとき、背後で誰かが私の名前を呼んだ気がした。
振り返れば、きっとまだ間に合った。
でも私は、もう振り返らなかった。
星になるって、こういうことなんだと思う。
誰にも必要とされなくなって、やっと静かになれる。
その夜、空に星がひとつ増えた。
それが私だったことを、知る人はいない。
12/15/2025, 2:10:29 AM